プライベートクラウドの誕生と変遷:システム構築の新標準(2/2 ページ)
クラウドの台頭に伴い、システム構築の新たな手法として「プライベートクラウド」の可能性が浮上してきた。企業とクラウドのかかわり方はどう変化しているのかを解説する。
以下では、プライベートクラウドを理解する上で、気を付けるべきポイントを列挙する。
XaaSとは何が違うのか?
XaaSは、情報システムのさまざまな構成要素をサービスとして提供するビジネス形態の総称だ。XaaSを考えるに当たり、ユーザー企業はサービスを利用する立場である。それに対し、プライベートクラウドではサービスを自社もしくはグループ企業に対して提供する立場を取る。まずはこの点が異なる。
また、プライベートクラウドでは運用ポリシーやサービスレベルの保証など、情報システムにかかわるガバナンスをユーザー企業自身が握っている。この「ガバナンスの有無」がプライベートクラウドとほかのXaaSを差異化する最も大きなポイントといえる。
自社内運用であることが必須条件か?
上記の通り、プライベートクラウドの最も重要な点は「ユーザー企業がシステムに対するガバナンスを保持していること」である。逆にいえば、運用ポリシーやサービスレベルの保証をユーザー企業が完全に制御できる状態であれば、システムの設置場所に特別な条件はないといえる。
例えば、自社内設置の情報システムやサーバを仮想化で統合したとしても、運用ポリシーやサービスレベルの保証を自ら制御できなければ、それはプライベートクラウドとは呼べない。逆に社外のデータセンターを利用している場合も、ユーザー企業側が運用ポリシーやサービスレベルの保証を定義でき、仮想化/抽象化で迅速かつ柔軟にシステムを構築、運用していれば、それはプライベートクラウドとなる。
仮想化によるシステム統合がもたらす結果とは何が異なるのか?
仮想化技術を駆使することで、サーバやストレージを統合し、必要なITリソースを必要な時に確保する状態を作り出すことが可能だ。その先には運用ポリシーやサービスレベルの保証を定義し、それらに従った仮想化リソースの配備/稼働も視野に入ってくる。
こうして構築されたシステム環境はプライベートクラウドとどう違うのだろうか。結論を言うと、本質的に変わりはない。つまり仮想化技術を駆使することで、運用ポリシーやサービスレベルの保証の制御を含めたシステム統合を実現した状態は、プライベートクラウドが目指すものと結果的には同じになる。
これらの一連の定義や解説を踏まえて、プライベートクラウドの位置付けを整理したのが以下の図になる。
本稿では、プライベートクラウドの定義と概念の理解を目的とした解説を行った。システム構築の新たなスタンダードになる可能性を秘めたプライベートクラウドについて、理解を深めていただければ幸いだ。
著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチのシニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職を務める。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。著書は「クラウド大全」など。
関連記事
- 特集:システム構築の新標準「プライベートクラウド」
- 日本オラクル、クラウド時代のデータセンター構築に自信
プライベートクラウドへの取り組みを強化する。 - NECと富士通のトップが語るクラウド事業
- 富士通の企業向けクラウドは中小も狙う 3年3000億円規模に
- NEC、プライベートクラウドに本格参入 基幹システムのクラウド化に自信
- プライベートクラウドはコスト削減をもたらす「魔法の杖」――IBM
- <オルタナティブ・ブログ>プライベートクラウドの意義を自家用 vs公共 交通機関で考える(坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング)
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.