Twitterマーケティングの成功事例を分類する【後編】:企業とTwitterの向き合い方(3/3 ページ)
企業マスコットのキャラクターになりきったつぶやきでユーザーを巻き込んだり、Twitter上で消費者とのやり取りを徹底したりする企業が、Twitter経由でさらなる利益を生み出している。最終回では、Twitterマーケティングにおける成功例を追いかける。
Dell以上にユーザーとの密接なやり取りを実現しているのがZapposだ。同社は靴とアパレル系商品のオンラインショップを運営しており、顧客満足度を上げるためのユニークな施策を行っていることで有名だ。7月に発表されたAmazonによる同社の買収において、ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)から「顧客重視の企業」と紹介されているほどである。
その一環でTwitterも活用しているが、その取り組み方が半端ではない。CEOのトニー・シェイ氏が先導して社員にTwitter活用を呼び掛けており、現時点で481人がTwitterに参加している。また彼自身も「@zappos」というアカウントでメッセージを投稿している。
彼らのアカウントは「twitter.zappos.com」という専用サイトに集約されており、個人のページを立ち上げなくても情報を閲覧できる。また同サイトは、一般のTwitterユーザーがZapposについて語った発言を一覧できるページ、Zappos社員がTwitterに画像を投稿できるサービス「TwitPic」にアップロードした写真を閲覧できるページ、フォローされた数に基づいた社員アカウントのランキングページ、さらにTwitterの使い方ガイドまでを設置している。Zappos社員とユーザーが交流できる広場がTwitter上に作られているのだ。
Twitterを使った場合、ユーザーに企業サイトへと足を運んでもらうのではなく、企業側からユーザーが日常的に集まる場所に出向くことができるのが大きい。ユーザーにとって、Twitter上でのコミュニティーは、別のWebサイトに移動する手間が掛からず、意見を考えた瞬間につぶやける。もちろんネガティブな意見が集まりやすいという側面もあるが、それを補って余りある対価が得られるといえる。
さらにTwitterは、APIを通じてさまざまなクライアントやサービスからのアクセスが可能であり、ユーザーの生活スタイルに密着したサービスである。日常的にユーザーとの接触を保つサービスに専用の窓口を設ける利点は大きい。
ただし、コミュニティー型の活動では、正確な効果測定が難しいという問題がある。またその性質上、カスタマーサービスに近い領域まで入り込まなければならない。顧客との関係を構築するには相当の時間がかかり、直接的には利益には結び付かない行動も必要とされる。企業は、ユーザーとの良好な関係を維持する上で、どこまでが必要な行動で、どこからが必要のない行動かを区別し、ソーシャルメディアの活用に真剣に臨む覚悟が必要とされる。
Twitterは企業のマーケティングやプロモーションにおいて、さまざまな形で生かすことができる可能性を持っていることをご理解いただけただろうか。しかしTwitterに代表されるソーシャルメディアでは、これまでのマーケティングやプロモーションの常識は通用しない。導入や活用に踏み切った企業は、手探り状態で活動を進めざるを得ないだろう。またTwitter自身が日々進化しており、それを取り巻くサービスや参加するユーザーも刻々と変化する。これまでの解説を参考にしながら、実際にTwitterに参加し、そこで体験したことを基に戦略を考えてみてほしい。
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著者プロフィール:小林啓倫(こばやしあきひと)
日立コンサルティング シニアコンサルタント。1973年2月26日生まれ。東京都出身。筑波大学大学院(地域研究研究科)修了。国内のシステムインテグレーターでERPコンサルタントとしてキャリアを積んだ後、米マサチューセッツ州のBabson Collegeでアントレプレナーシップを学び、MBAを取得。外資系コンサルティング会社、ベンチャー企業を経て、2005年に日立コンサルティングに入社。「シロクマ日報」「POLAR BEAR BLOG」など、複数のブログを執筆するブロガーでもある。Twitterのアカウントは「@akihito」。URLは「http://twitter.com/akihito」
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