Twitterは社会をどこまでオープンにするのか:日曜日の歴史探検
人だけでなく、機械や政府までもTwitter上に情報を集約するようになった現代。この巨大なデータベースにはまだまだ価値が眠っています。この価値は、企業が社会に向けてオープンな組織に変化していく流れを生み出すのでしょうか。
Twitterといえば今や時代を代表するWebサービスに成長したことに異議を唱える方は少ないでしょう。Twitterにいるのは、人間だけではありません。例えばミクシィ社内で稼働するコーヒーメーカーの抽出状況を知らせてくれる「萌香」(もか)をはじめ、いまでは家庭の冷蔵庫やテレビもその電力消費量をTwitterにPOSTする時代です。Googleはこれらの情報の検索をよりよくしようと考えていますが、いわば巨大なデータベースを有しているTwitterそのものが、そこから価値を生み出していこうとする姿に筆者は興味があります。
そんな中、政府のTwitter利用などもみられるようになってきました。米国政府は5月に公式ブログで「White House 2.0」と題し、Twitterをはじめとする複数のコミュニケーションサイトでの情報発信を宣言しました(米政府、公式Twitterをスタート)。「古い習慣や考え方では現在の課題を解決できない」というオバマ米大統領の言葉は考えさせられるものがあります。
英国政府も負けてはいません。「政府機関のためのTwitter戦略テンプレート」を作成してしまうほどの熱の入れようです。
TwitterはコンシューマーWebとしては日本でも流行の兆しがありますが、日本政府レベルではまだTwitterに対する有効な手が打てていない辺りが少し残念なところです。
企業が社会に向けてオープンな組織に
Twitterに大勢のユーザーがいるということは、それらのユーザーは新しい形のコミュニケーションとしてTwitterをとらえているということです。当然、ビジネス的な観点では1つのチャネルとみなして取り入れていこうとするのは賢明な判断といえるでしょう。
ここで、Twitterはマーケティングやカスタマーサービスに使えるのではないか? とお考えの方もおられるでしょう。社員一人一人がクライアントとの関係強化に個人的なつながりを生かすという動きは海外ではすでに盛んです。日本だとやっとTwitterを使ったマーケティングが少しずつ普及し始めたころでしょうか。Twitterなどのソーシャルメディアは本質的にコミュニケーションツールですし、昨今ではこうしたソーシャルメディアの方が連絡がつきやすいという層も確実に存在します。そうしたユーザーは若い世代であり、かつITに対するリテラシーが比較的高いと考えるならば、ハイテク産業、例えばIT業界などではカスタマーサービスとしてチャネルを整備しておくのは有効な策となります。この辺りはsalesforce.comがいい仕事をしています。
一方で、社内のコミュニケーションをTwitterでやれないか、と考える方もおられるでしょう。一般に、大企業になればなるほど、社内のコミュニケーションは狭くて偏ったものとなります。企業にお勤めの方なら誰でもご経験があるように、縦割り型の組織に代表されるセクショナリズムの中では、自然と自分が属している組織の人間としか情報交換しなくなるものです。
これを回避するため、これまで企業の社内では、多くのコラボレーションツールが用いられてきました。グループウェアや社内Wiki、最近であれば社内SNS的なサービスを取り入れている企業も多いでしょう。これらはナレッジマネジメントとしてはそれなりに機能してきましたが、結局のところ部分最適でしかありませんでした。企業のシステムとデータもbotのように振る舞わせることで、そのステータスを必要な人に知らせるというのが今後のトレンドになっていくのでしょうが、こちらもsalesforce.comが先日「Salsforce Chatter」を発表して、コンシューマーWebのパワーを企業に取り込む姿勢を見せています。
企業の内と外でTwitterを活用しよう、という機運が高まっていますが、実際にTwitterを導入しようとするとすぐに壁に突き当たります。特に、社内から社外に出る情報の管理、すなわち、セキュリティ面の統制が利かないということです。業務に関係する情報をPostしてクラウドソースの中から有効な一手を見いだせる可能性はありますが、それは社外の人間に胸襟を開くということでもあります。非公開情報として信頼できるフォローとのみ意見交換すればリスクも減るでしょうが、いずれにせよセキュリティを担当する部署からいえば気が気じゃない心境であることは容易に想像できます。社内の若手がさほどセキュリティを意識することなくTwitter上で社内情報をPostしてしまっている、どうすればいいのだろう……という企業のセキュリティ担当者を筆者は何人か知っています。この辺り、統制の整備がTwitterの普及に比べかなり遅れてしまっている現状があります。Twitterがそうしたセキュリティ機能を提供する可能性よりは、上述のSalsforce Chatterなどで統制を図るというのが、企業の判断としては賢明であるように思います。
多くの場合、わたしたちは後から振り返ることでその時代の変化を改めて感じることになります。企業がTwitter的なサービスを検討するしている今日の状況は、企業が社会に向けてオープンな組織に変化していく流れの源流辺りなのかもしれません。
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