求められるプロダクトアウトからの発想転換:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
日立製作所が地方自治体向けのクラウドサービスを発表した。同社のビジネス展開から行政システムとクラウドの関係を明らかにする。ベンダーは、プロダクトアウトでシステムを拡販するという発想を転換する必要がある。
最終的にクラウドに向かう行政システム
パブリッククラウドが普及した現在、地方自治体や行政機関のサービスにおいて、パブリックサービスが主体となる可能性もある。つまり手組みを前提とし、高額な維持費用を要するメインフレームを使い続ける必然性は何もない。
クラウドの前提となっている分散型データベース――Dynamo、Google BigtableのColumnFamily、Cassandraなど――には、セキュリティを高める完全分散設計を取っているものもあるが、そこまで至っていないものも混在している。
しかし、AmazonやGoogleのパブリッククラウドにおいて、両社のサイトからの情報漏えいは聞いたことがない。セキュリティが技術的に問題ない水準に達しているなら、行政システムにクラウドを導入するのも大きな問題がないと考えるのが自然だ。
不況により安価なシステムへ移行するのは自然な流れだ。まして、地方自治体の財政が危機的状況にある現在、彼らにはクラウドサービス以外に選択の余地はないはずだ。
プロダクトアウトからクラウド中心に
クラウドサービスが普及する有望な分野について、僕は長い時間考えてきた。それは、公共やコミュニケーション関連の分野であることが分かった。クラウドサービスの導入で大きくコストを節減でき、便益が高まる分野とも言い換えられる。公共サービスは、実はクラウドと最も親和性が高い。
地方自治体の情報システムのクラウドへの移行はカウントダウンに入っている。そこで、クラウドサービスにおいて今後どういった企業が競争優位に立つかについて、最後に考えを記したい。
現在、コンピュータベンダーは、自社のハードウェア/ソフトウェア製品の優位性を主張し続けている。しかし、クラウドに関するハードウェアやソフトウェアの日本の技術水準は、海外の先進企業に大きく差をつけられてしまった。一方、海外のベンダーは日本市場で一定のシェアを確保したものの、いわゆる本国の特定部門からの指示に従うだけの「売り子」にすぎない。
クラウド時代に突入し、価格や性能が一層重視されるのは間違いない。つまり、世界を相手にビジネスを展開し、大きなシェアを獲得している外資系大手ベンダーの方が、クラウドを構成するハードウェア/ソフトウェアの要素で有利といえる。
だが、これは「プロダクトアウト」というビジネスモデルで有利なだけだ。仮に外資系の大手ベンダーがプロダクトアウトの発想から抜け出そうとしても、海外本社がそれを許さないだろう。
その点で、国産ベンダーにもチャンスがある。まずは、今まで築き上げてきた「メインフレームを売る」という旧来の伝統的なプロダクトアウトを放棄してみてはどうか。そして、各分野で求められるクラウドサービスにおいて、主導権を握ってもらいたい。
システム構築に占めるハードウェアのコストは全体のわずか2〜3割、ソフトウェアはクラウドでミドルウェアが中心だから、総額のわずか1割にすぎない。コストの大半はプログラム(スクリプト)を組む作業だ。もちろん、自社が投資の大部分を負担するリスクを覚悟しなければならないが、世界の潮流がクラウドに向かっている事は誰もが承知している。
国産ベンダーが世界に先立ち、実用に耐えうるクラウドサービスの提供やシステムを構築することは、21世紀のグローバルコンペティションでまい進する大きなチャンスであることは間違いない。
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