NECと富士通のトップがみせたクラウド事業への意気込み:Weekly Memo(2/2 ページ)
NECと富士通のトップが先週、相次いでクラウド事業について語った。両社にとって同事業は最重点の注力分野。トップはどんなメッセージを発したのか。
クラウドでビジネスの変革を
一方、富士通の山本社長は、5月13日に開かれた同社のプライベートイベント「富士通フォーラム2010」の基調講演でクラウド事業に言及した。
富士通のクラウド事業について山本社長は「クラウドの話になると、企業の社長は魔法の玉手箱だと思ってニコニコしているが、隣りに居るCIO(最高情報責任者)は渋い顔をしているケースが少なくない。富士通が提供するクラウドは、社長にもCIOにもニコニコしてもらえるものだと確信している」と語った。
その理由については「企業が安心して利用できるセキュアな信頼性の高いクラウドサービスを提供している」からだとし、昨年来、同社が提供しているクラウドサービス基盤「トラステッド・サービス・プラットフォーム」の有効性を強調した。
山本社長によると、このクラウドサービス基盤はシステムリソース、ネットワーク、セキュリティ、マネジメントサービスの4つからなる大規模仮想化プラットフォームで、同社のクラウドサービスはすべてこの上で展開されているという。
こうしたクラウド事業における富士通の強みについて山本社長は「これまで培ってきた構築・運用ノウハウと、プロダクトからネットワークに至る一気通貫の総合力にある。さらにそうした実績と総合力によって、企業の既存システムとクラウドを最適にインテグレーション(統合)できる唯一のITベンダーだと自負している」と力を込めた。
山本社長はそのインテグレーションを「ハイブリッド・クラウド・インテグレーション」と呼んだ。「企業内のプライベートクラウドは、基幹システムや現場のフロントシステムなどの効率化を実現する。さらに、プライベートクラウドはパブリッククラウドと融合させることによってビジネスを大きく変革し、企業に新たな価値をもたらすものとなる。そうした価値創造型のICT(情報通信技術)基盤を実現するのが、ハイブリッド・クラウド・インテグレーションだ」という。
「クラウドでビジネスの変革を」というのが、山本社長の明快なメッセージである。企業におけるクラウド利用の目的は、経済環境がいまだ不透明なこともあって、まだまだコスト低減が先に立つケースが多い。だが、本来はコスト低減を含めてビジネスの変革が大目標であるべきだ。基幹システムのクラウド化を強調したNECの遠藤社長の意図も、山本社長のメッセージと同じだろう。日本を代表するITベンダーである両社のトップには、今後もこのメッセージを「進むべきプロセス」も合わせて声高に語ってもらいたい。
プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)
ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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