Microsoft、クラウドビジネスを推進するビジネスパートナー向けの施策を増強:Microsoft WPC 2010 Report
Microsoftにとって2010年はパートナーのクラウドビジネスへの転換を支援する重要な年のようだ。
7月13日(現地時間)、米Microsoftのビジネスパートナー向けイベント「Worldwide Partner Conference 2010」の会場で、同社のバートランド・ローネー氏(執行役 常務 ゼネラルビジネス担当)に、ビジネスパートナーがMicrosoftクラウドビジネスに移行する上での課題、課題に直面したビジネスパートナーに対する対応についてインタビューした。
ローネー氏によるとMicrosoftのビジネスパートナーは大きく、「従来のパートナー」と「新しいタイプのパートナー」の2つに分けられる。前者は端的に言うと、Microsoftの認定ゴールドパートナーに名を連ねる企業を指す。一方、「新しいタイプのパートナー」はこれまでMicrosoftとビジネスをしてこなかった企業のことだ。
クラウドビジネスの展開については「新しいタイプのビジネスパートナー」の方が抵抗感が少ないとローネー氏は言う。彼らの関心は新しいビジネスモデルを導入し、売り上げのトップラインを増やすことにあるようだ。つまり、うまくいっているビジネスモデルを変えるというリスクおよび過去のしがらみがないという意味で、クラウドビジネスへの参入に積極的なのだ。
認定ゴールドパートナーの1社である富士ソフトの河野文豊常務執行役員は「個人的な意見ですが」と断った上で、Microsoftのクラウド戦略についてこうコメントした。「(Microsoftは)思ったよりも慎重でした」。
7月12日午前中の基調講演ではスティーブ・バルマーCEOをはじめ、Microsoftの幹部たちが同社のクラウドビジネスについて包括的なビジョンを発表した。そのビジョンは、既存のパッケージビジネスを守りながら新たな領域に進出するものだった。これはMicrosoftだけではなく、同社のビジネスパートナーおよびビジネスパートナーの顧客企業たちの状況を考えると、仕方のないことかもしれない。既存の資産を生かしながら新しいものを作っていくことは、成功を積み重ねてきた企業(と、そのエコシステムを構成する企業群)がたどる道だ。
ローネー氏は、今後2年でマイクロソフト パートナーネットワークに登録している企業を「BPOS(Business Productivity Online Standard Suite)」の販売パートナーにもしていきたいと話していた。これまでの2年は、同社のビジネスパートナーにとって、クラウドビジネスに対するイメージが湧きにくかったそうだ。BPOSが2009年に登場したことで、クラウドビジネスの方向性が朧気(おぼろげ)ながら見えてきたのでは、と言う。
BPOSとはMicrosoftがホスティングするメッセージングとコラボレーションソリューションを組み合わせたサービスだ。Exchange Online、SharePoint Online、Office Live Meeting、およびOffice Communications Onlineが含まれる。1ユーザー当たり月額1044円、5シートから購入が可能だ。このサービススペックからも明らかなように、BPOSの販売においてビジネスパートナーのビジネスモデルは、大きな変化ではないものの、確実に変わる。その時、多くのビジネスパートナーがMicrosoftに求めるのは「新しいビジネスの展開方法」(ローネー氏)だ。
ビジネスパートナーの要望に応える形で、Microsoft側の準備も進んでいるようだ。ジョン・ロスキル氏(Microsoft パートナーグループ 担当コーポレート バイスプレジデント)が発表したMicrosoftのパートナー支援策は4種類(1.プランニング、2.ブランディング、3.サポート、4.ツール)ある。
これらの施策に含まれるビジネスパートナー向けの新しいメニューとして、「Microsoft Cloud Essentials Pack」と「Microsoft Cloud Accelerate」の2つが2010年後半に追加される。Microsoft Cloud Essentials Packは、クラウドビジネスに関連するトレーニングやテスト、マーケティングといったリソースを1年間無償で提供するもの。Microsoft Cloud Accelerateはクラウドビジネスに本腰を入れるビジネスパートナー向けにデザインされたプログラムで、2010年11月の開始を予定している。
Microsoftにとって、2010年はパートナーのクラウドビジネスへの転換を支援する重要な年のようだ。世界規模でパートナー支援策を増強しつつ、各国で独自の施策も展開していく。ローネー氏は「3〜5年後を見据えて戦略にやらなくてはならない」とコメントしていた。
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