グローバルサイトの運用 体制とルール決め:世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)
グローバルサイトの運営には、本社と現地法人の意思疎通が不可欠だ。「運営の主体」「Webガバナンス」「監視機能」という3つの観点から、サイト運営の最適解を考える。
監視機能を整備する
次に、グローバルサイトのWebガバナンスを順守するための監視機能について考えたい。鍵を握るのは、「事前承認」「事後承認」「不具合のチェック」である。
事前承認の必要性
事前承認は、グローバルサイトにコンテンツを掲載する前に、Webガバナンス責任者の承認を得ることだ。承認者はガイドラインに基づいて、コンテンツの内容や文章表記、サイト構成、デザイン、HTMLコーディングの承認、修正指示を行う。責任者がガバナンスを効かせることで、グローバルサイトの均質化が図りやすい。CMSのワークフロー機能を使い、未承認状態でコンテンツを更新できないようにしておくと、承認プロセスも守られる。
事後承認による対応
事後承認は、コンテンツの更新後にグローバルサイトの承認を行うことだ。基本は事前承認を推奨するが、運営担当者が少ない場合は、Webサイトの更新速度が遅くなり、緊急時に対応しにくいというデメリットもある。
事後承認が向いているのは、担当者の技量が高い場合だ。ただし事後承認は、コンテンツの更新後に新たな問題点が見つかることもある。このリスクを十分検討しておく必要があるだろう。
巡回監視による不具合のチェック
巡回監視は、グローバルサイトのコンテンツをランダムまたは一定のルールに基づいて確認し、ミスを発見する方法だ。1つのWebページが複数のWebページと連携している場合、巡回監視によりコンテンツ間の表記の不統一やリンクの矛盾を見つけやすい。また見つかったミスを分析し、よくある不具合に対しては、チェック・承認方法を見直し、ガイドラインに反映させるなど、恒久対策を練る必要がある。
プロジェクト単位で進むグローバルサイトの構築に比べ、運用は組織や文化の壁を最も感じやすい段階だ。それはグローバルサイトに限らず、世界に向けてマーケティングコミュニケーションを展開する場合に直面する壁である。最終回では、この壁の乗り越え方を伝えたい。
プロフィール 大里真理子(おおさと・まりこ)
アークコミュニケーションズ 代表取締役社長。日本アイ・ビー・エム、ユニデン、アイディーエスにてグローバルビジネスや新規事業立ち上げに従事。5年にわたる米国、ドイツ、中国での実務経験を生かし、VisualとVerbalで「Local+Global」なビジネスコミュニケーションをサポートするアークコミュニケーションズを設立。「目指せグローカルなビジネスコミュニケーション!」をモットーに、Web・クロスメディア制作、翻訳、通訳、人材派遣を営む。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「マリコ駆ける!」を執筆中。Twitterのアカウントは「@marikokakeru」
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