Oracle、ストレージ戦略を発表:「レッドスタック」で「ビッグブルー」に対抗
Oracleは、総合的ストレージプロバイダーを目指しつつオープン標準インフラをサポートするという綱渡りを続けるようだ。
米IBMの新たなライバルとしてエンタープライズシステム市場で名乗りを上げた米Oracleは、ビッグブルー(IBMの愛称)の向こうを張って自社独自のビジュアルアイデンティティーを確立したいと考えているようだ。同社が打ち出した愛称は「レッドスタック」だ。
あるシリコンバレー企業の幹部は、米eWEEKの取材に対して「大きな出費で悩んでいるとうわさされているOracleがレッド(赤字)という言葉を使うのはどうかと思う」と冗談めかして言った。これは、米Sun Microsystemsの買収でOracleが巨額の支出を迫られていることを指している。
紫色に近いSunブルーという独自のイメージカラーで知られたSunを74億ドルで買収したOracleは、買収後5カ月でSunのストレージ部門を自社に統合した。
Oracleは7月14日、サンフランシスコのウェスティンホテルにおいて夏の「Storage Summit」シリーズを開幕した。同サミットの今後の開催地と日程は、シカゴとデンバー(いずれも7月15日)、ミルウォーキー(7月20日)、シンシナティ(7月21日)、コランバス(7月22日)、デトロイト(7月27日)、ミズーリ州インディペンデンス(7月28日)、インディアナポリス(7月29日)、オマハ(8月5日)、メンフィス(8月18日)、セントルイス(8月24日)となっている。
Oracleでストレージ販売コンサルティングディレクターを務めるロブ・クラスマン氏は同サミットで7月14日、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、データセンター管理者などで構成される聴衆を前にして「皆さんは“one throat to choke”(問題が起きれば1社を責めるだけでいい)という表現を耳にしたことがあるだろう。われわれはこれを変えたいと思っている。“the one hand to shake”(握手すべき企業は1社だけ)と呼ばれるようになりたいのだ」と語った。
つまり、Oracleはほかの多くのITシステム企業と同様、総合的サービスを提供するストレージプロバイダーになりたいのだ。既に同社は、並列データベース、ミドルウェア、Java仮想マシン、多数のビジネスアプリケーションに加え、Exadataサーバ、ネットワーク関連製品、さらにはデータセンタースイッチなども販売している。
Oracleは真にオープンな選択肢を提供できるのか?
しかしその一方でOracleは、ベンダーロックイン(1社のベンダーによる囲い込み)という批判をかわすために、既存のオープン標準インフラをサポートするとともに、上述の技術に加え、新たに獲得したSunおよびStorageTekのストレージ製品でこれらのインフラを強化する考えだ。
Oracleは今後数カ月にわたり、こういった内容をストレージとデータセンターに関する総合戦略の基本メッセージとしてアピールするようだ。しかし、Oracleが実際にこういった綱渡りをして、ITビジネスで33年間にわたって獲得してきた信用を維持できるかどうかは不明だ。
ITシステム企業はよく次のようなことを言う――「われわれはオープンな標準をサポートしている。顧客企業が当社からどんな製品を購入しようとも、われわれはそれを顧客のシステムに統合できる。当社の製品はすべてモジュール方式なので、顧客が気に入れば後から買い足すこともできる」
そう言いながらも、こういった企業はできるかぎり自社のカタログにある製品を顧客に売りたいと思っているのだ。これは1社のベンダーへの依存度が高まり、“one throat to choke”という状況につながる。
さらにこれらの企業は、潜在顧客に次のように説明する――「すべてが緊密に連係していれば(つまり同じメーカーあるいは同じパートナーグループから購入すれば)、はるかにうまく機能する」。確かにその通りかもしれないが、それでもITマネジャーは、このメリットと特定ベンダーに依存することによる長期的影響を比較検討する必要がある。
購入判断を下すに当たっては、ITマネジャーはシステムメーカー各社(この分野に新規参入したOracleを含む)の姿勢にも注目し、ベンダー依存をめぐる問題に対処するのに必要な柔軟性を備えているか見極める必要がある。
Oracleでストレージ製品のマーケティングディレクターを務めるマイケル・ブラウン氏は同サミットで、最近アップデートされたSunストレージシステムを紹介した。この製品については、6月29日付のeWEEKの記事でも報じた。さらに同社は、自社の総合技術スタック「Red Stack」の最新アップデートについても説明した。
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