オフィスの外で「仕事ができない」企業の課題と解決策:ワークスタイル変革とセキュリティの両立(2/2 ページ)
IDC Japanの調査では、PCの持ち出しを認める企業の8割が生産性の向上を実感していた。だが、許可する企業は2割にとどまる――。社員の生産性を高めた企業の状況からモバイル利用のヒントを探る。
モバイル導入のファーストステップ
PCの持ち出しを認めていない企業がモバイルワークスタイルによって社員の生産性向上を図りたい場合、機器の盗難・紛失のリスクを軽減する手段を講じられれば、モバイルワークスタイルを導入できるだろう。
だが、いきなり厳しいセキュリティ対策やルールを導入すれば、現場の社員や管理者に混乱が生じることが懸念される。片山氏は、まずオフィスの外で可能な業務の内容や必要な機器を検討し、その機器で可能なセキュリティ対策を導入するべきとアドバイスする。
例えば業務連絡を重視したい場合は、法人向けの携帯電話と通信事業者が提供するセキュリティサービスの利用がある。法人向けの携帯電話は指紋認証機能を搭載するなど、コンシューマー向け製品よりもセキュリティが強化され、業務に必要がないアプリケーションの利用を禁止することもできる。
セキュリティサービスでは、盗難・紛失に遭った端末を遠隔からロックしたり、保存されたデータを消去したりできる。さらにWeb型の電話帳やスケジューラー機能を利用すれば、端末にデータを保存する必要がなくなる。
国内では約1億台の携帯電話が普及し、既に仕事に携帯電話を使う人も多い。片山氏によれば法人契約で利用されている端末は約10%程度であり、大半の人は個人契約の端末を仕事にも使っているというのが実態だ。個人契約での端末では企業としての管理や対策の徹底が非常に難しい。モバイルワークスタイルを携帯電話で始めるには、法人向けの仕組みを導入することで盗難・紛失のリスクを軽減することが重要である。
より本格的な業務をする場合は、PCを利用することになる。PCの盗難・紛失対策では、持ち出しを認める企業が導入している強固なユーザー認証やHDD暗号化が一般的だ。しかし、これらの対策は実際に機能しているのかを社員や管理者が確認できないという課題を抱える。
このため、近年は富士通やインテルといったベンダーがPC向けの盗難・紛失対策技術の開発を進めている。携帯電話向けのサービスと同様に遠隔から端末をロックしたり、データを消去したりできるほか、起動をできなくさせるといったことも可能だ。
端末側でのこうしたセキュリティ対策に加えて、片山氏が推奨するのがクラウドコンピューティングの活用だ。SaaSや自社で構築したクラウド環境の業務アプリケーションをサービスとしてモバイル端末で利用することにより、端末内にデータを保存する必要性がなくなるだろう。端末側の対策で第三者による悪用を防ぎ、万が一対策を突破されてもデータが存在しなければ情報漏えいの被害も回避できる。
オフィスの外で仕事をすることでのセキュリティ上のリスクに対処する手段が整いつつある今、モバイルワークスタイルは以前よりも導入が難しくないものとなっている。
片山氏も企業の競争力強化や成長の観点から、モバイルワークスタイルは導入すべき手段だと語る。「企業を取り巻く環境を考えれば、社員の生産性を高めることが現実的な方法だ」(片山氏)。ほかにも、盗難・紛失の影響がないことを証明できれば監督機関への届け出を不要にするといった、モバイルワークスタイルを推進する周辺環境の整備も不可欠だと指摘している。
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