“遊べる本屋”に学ぶ「社員の自由な発想を妨げない」方法(2/2 ページ)
遊べる本屋を掲げる「ヴィレッジヴァンガード」が、モバイル化と業務効率改善をテーマにクラウドサービスを導入した。「従業員の自由な発想を損ねない」を念頭に置いた情シスの考え方とは。
ポイントは一元管理、それが可能なシステムに
ポイントは一元管理。ここを主要件に2014年秋よりシステム統合化プロジェクトを開始し、マイクロソフトのモバイル化クラウドサービス「Enterprise Mobility Suite」と、SaaS型ビジネススイート「Office 365」を選定した。
具体的な選定要件には、システム資産を基本的にクラウド化できること、省コストと運用が容易であること、柔軟かつ迅速に変更対応ができることを据えた。選定作業時にちょうど導入パートナーのソフトバンク・テクノロジーよりOffice 365の導入提案があったタイミングも幸いし、Office 365の標準機能では解決できなかったアクセス権管理に関する課題はソフトバンク・テクノロジーのアドオンソリューション「Online Service Gate」を組み合わせて解決できた。
2014年12月に導入契約を結び、2015年1月より開発と導入作業を開始。まずは本社拠点でEnterprise Mobility SuiteとOffice 365を導入した。かなり早いスピード感にて各店舗にも広げていく方針で、本社の店舗本部および間接部門600ユーザーへの展開を予定している。
「Enterprise Mobility Suiteに含まれる Azure AD Premium、Microsoft Intune、そしてMicrosoft Azure Rights Management Service、3つのクラウドサービスのうち、まずはAzure AD Premiumから展開していきます。その後、マネージャー職用iPadの管理にIntuneを100台から展開すべく、2015年5月現在検証を進めています」(ヴィレッジヴァンガード IT企画部部長の片山龍児氏/同上)。
同社は全国400店舗をブロックとエリアに分けており、各地域のマネージャーは日々店舗を巡回しながら、スマートデバイスで本社本部と連絡をとっている。Enterprise Mobility SuiteとOffice 365により、セキュリティ性を確保したモバイルワークの利便性を容易に解決した。盗難や紛失の場合も、Intuneのリモートワイプ機能で情報漏えいなどのリスクを未然に防げる。
このほかに期待される効果として、店舗スタッフに対する人事管理のセキュリティ向上やシングルサインオンの実現も挙がる。例えば、各店舗スタッフの査定シートや給与明細などの重要データをやりとりする場合だ。送る側、受ける側、仲介する者、ともに効率をよくしたいと感じていた課題があり、給与明細などはこれまで全店舗へ郵送していた。ここの部分もセキュリティ体制を確保したことで、スマートにオンライン化できた。
複数あった業務ツールをまとめ、認証の仕組みも一元化(シングルサインオン)の実現は、エンドユーザーはもちろん、管理側の負担も減らす。「管理者側も、ユーザーの問い合わせ対応などに時間が減りました。ここを他のシステム企画など“未来のため”の重要な業務に注力できるようになると考えています」(足立氏・同上)。
これまで“リスクがあるからできなかった”デジタル化。Enterprise Mobility SuiteとOffice 365によって、安全性と利便性を両立して実現できた。効率化できたマージンを、本業である「よい売り場作りとスタッフの教育」に注力できることになる。全社施策の「業務の効率化」=「事業の成長」の実現により近づくと同社は評価する。
「Enterprise Mobility Suiteによって従業員にシステムの制約を感じさせない仕組みを構築すれば、“スタッフの遊び心をもっと生かした自由な売り場作り”が実現します。もちろんそのバックエンドも、確実な情報管理とセキュリティコントロールを実現できるはずです」(ヴィレッジヴァンガードの川上氏/同上)。
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