クラウド化で悩む企業に伝えたい「4つの基本」:「金融クラウドの先駆者」に聞く(3/3 ページ)
企業のクラウド化が急激に進む中、ウチは難しいと悩む企業も多い。「金融クラウドの国内パイオニア」として、自ら率先してクラウド化を進めるソニー銀行のキーパーソンに「どうすべきか、何を考えるべきか」のヒントを聞いた。
クラウド化で悩む情シスに伝えたい「4つ」のポイント
業務における周辺系のクラウド化を現在も加速させている福嶋氏は、自社のクラウド化の推進において4つのルールを定めている。
- 評価対象のサービスの仕組みや特徴を正しく“自分”で理解する
- 個別具体的な観点でチェックする
- いま確立しているものと比べて、(1)と(2)を評価する
- 外部のリソースは、(1)(2)(3)を効率的に進めるうえで“必要に応じて”使う
ここは「クラウド化を計画する企業や担当者」へのアドバイスにそのままつながると考えてよい。
まずサービスを理解しないと、アセスメント自体にブレが生じる。丸投げではだめだという。金融業界はFISCの安全対策基準という確立したチェックの観点がある。同様に自社の業種業界に沿ったチェックの観点を1つ1つつぶしていく。“クラウド”と言うが、本当に雲の中にあるわけではない。自社になくてもどこか物理的な場所の物理的なデータセンターに機械があり、その上で仮想化されている。そう考えると、オンプレミスシステムと共通するところ、違うところが見えてくる。
「いろいろな企業の話を聞いていると、“そもそも入り口で掛け違っている”場合が多いのですね。クラウドは海外だから、と決めつけていたり。もちろん海外でも使えますが、AWSは東京リージョンがあるので国内のみでも使えます。昔からグローバル企業でならば海外のデータセンターを使うシステムもあったはずで、それはクラウド固有の話ではありません。過去にオンプレで解決してきたはず。実は“もうあなたたちは答えを持っているので、それを活用しましょうよ”という話です」(福嶋氏)
振り返ると、メインフレームからオープン系へ移った時も、2000年頃のアウトソーシングが流行した時も似たような議論があったはず。メインフレーム時代の1つのシステムであらゆるものが多重化されている世界から、オープン系に移って1個1個は多重化されていなくともシステム全体で多様性を担保すればいいという考え方になった。だから止まるリスク回避のためパラレルで稼働させる。そう課題を解決する手順を踏んだ。上の世代となる先人は、それらを1つ1つ詰めて解決したから今に至っている。
「クラウド化も同じ手順を踏めばいいということです。クラウドだからといって新しい手順はありません。個別、具体的な課題、クラウド固有の課題はありますが、プロセスそのものは何十年か前と変わりません。クラウド技術の知識収集は怠りませんでしたが、その基本と合わせて、我々の上司にあたる筋が“もうやってきた”ことをやればいいことに気が付いたので、一気に進めることができました。上司の方に“あのときどうしたのですか?”と聞くと道が開くと思いますよ」(福嶋氏)
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