スタバファンを支える、コーヒー業界“もう1つ”の第3の波(3/3 ページ)
スターバックス コーヒーが、会員サービス「My StarBucks」のために構築したオンプレシステムのAWS移行を進めている。その背景と狙いとは。
業務部門からの要求に即応できる体制に
このほか、クラウドへの移行では、長期利用に関わるITコスト面やセキュリティレベルなども心配ごとに上がる。
前者は、各アプリケーションのサービスレベルの観点を加味したアセスメントを順を追ってじっくり行い、一部システムは即座に移行する方が有利と判明したことが背中を押した。後者についても、AWSの「SecurityGroup」や「ACL」などによるアクセス制御と、アンチウイルスソフトの併用により、十分な対応が可能なことが確認できた。
これを受け、同社は2014年9月に既存システムの一部よりAWSへ移行すること決断。2015年2月にAWSへの移行が完了し、本番運用を開始した。
AWS化のメリットを理解することで、より効率を高めるための「AWS向けにアプリケーションを最適化する」などの動きも進んだ。
例えば、同店のプリペイドカード「スターバックス カード」はクレジットカード決済で入金できる。バックグラウンドでは、利用者のログインから入金完了を通知するメール送信までに「ログイン状況確認」「残高照会」「与信チェック」「Valueの追加」「売上処理」「ログイン状況確認」「メールアドレス取得」「完了メールの送信」など、8つもの処理を経て行われる。アクセス急増時にレスポンスが落ちる要因の1つだった。
「外部へ切り出せるものはバッチで処理することで2つの処理を削減できました。こうした、密結合されたシステム構成の改善策をシステム全体に対して実施できたのも効果です」(野溝氏)
また、1台の物理サーバが複数の処理を担っていたこれまでの運用に代え、AWS上の各仮想サーバは特定の処理だけ行うよう構成を見直した。リソース管理の手間が減り、同時にスケールアウトも行いやすくなった。例えば、アクセスが急増するメルマガ配信時の一定期間のみスケールアウトし、平常時はコストを抑えるようなフレキシブルな運用が可能だ。
まだ残るオンプレミス環境とも「AWS Direct Connect」により専用線で接続しつつ、各サービスは「Amazon CloudFront CDN」や「Amazon S3」を使うよう環境を整えた。そして、これらの監視は「AWS CloudWatch」で一元的に。運用はかなり楽になったという。
サーバ調達期間と運用コストにも明確に効果がある。サーバリソースの追加に要する期間は、これまでの数週間/数カ月単位から数営業日までに短縮することで、スピードを望む業務部門への要望にも迅速に応えられるようになった。
「AWSは保守性も非常に高く、アクセス増に対するリソースの追加も迅速に行え、業務部門からの要求に即応できる環境が整えられています」(野溝氏)
同社では今後、CRM基盤での活用やPOSシステムとの連携を通じ、AWSにより分析基盤を強化するとともに、AWSに最適化したアプリケーションの改修を通じて利便性の向上に継続して取り組む考えだ。スピードとアジリティで顧客をつかみ、離さない施策を。コーヒー業界には、ブルーボトルコーヒーの第3の波とともに、クラウド、モバイル化、ビッグデータ解析の「IT市場の第3の波」も訪れている。
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