マイクロソフトがクラウド推進新体制 「金融業界対応」強化
日本マイクロソフトが金融機関向けクラウド推進体制を強化する方針を示した。6月改定予定のFISC安全対策基準へSIと対応し、監査対応などの需要に応じたサービスの強化を図る。
日本マイクロソフトは、金融機関へのクラウド導入推進に向けた体制を2015年7月より強化する。
同社はクラウド3兄弟と位置付けるクラウドサービス「Azure(IaaS/PaaS)」「Office 365(SaaS)」「Dynamics CRM Online(CRM)」を展開。Office 365はすでに日経225銘柄企業の70%が導入、Azureも国内成長率が昨年比198%と、企業のクラウド化導入意識の高まりとともに導入企業を増やしている。
なぜ金融機関か。金融機関が導入するITシステムは評価基準が他業界より厳しい。どの金融機関も参照するFISC(金融情報システムセンター)が定める安全対策基準への適合が必要不可欠であり、さらに個別に数段階のチェックリストを設けているほどだ。
この金融機関がクラウド導入で課題とする「データの場所と法令準拠」「セキュリティ対策」「機密データの保護」をクリアにし、先行するAmazon Web Services(AWS)のキャッチアップを含めて導入訴求を一層強めるのが狙い。金融機関向けパブリッククラウドのビジネス規模は2016年に300%の拡大が見込まれ、基準の厳しい金融機関が採用するほどならば自社も──こんな効果も想定する。
マイクロソフトのクラウドは上記の課題に対し、
- 日本データセンターからのサービス提供
- FISC安全対策基準に準拠
- 当局監査への対応や法令対応機能の強化
で対応する。
特に重要なFISC安全対策基準、は2015年6月末予定の改訂に対応した「金融機関向けセキュリティリファレンス」をSI事業者など7社が協同で用意する。「これまで個別に確認していたFISC安全対策基準の各項目への準拠確認や情報提供も、ガイドラインが出れば大きく進展するとみている」(日本マイクロソフト 執行役専務エンタープライズビジネス担当の小原氏)。
社内体制の強化の一環で各部門から招集する「仮想チーム」には法務担当(リーガル)も含め、FISC基準の変化を先取りして把握でき、顧客の法令解釈相談なども適切に対応できる体制も整えた。金融機関向けセキュリティリファレンスの確認と整理は、日本ビジネスシステムズ、トレンドマイクロ、電通国際情報サービス、日本ユニシス、三菱総研DCS、SCSK、三菱総合研究所の7社が共同で進め「マイクロソフトのクラウドは、金融機関でも安心して使えます」とうたえるようにする。
もう1つは「監査対応」を中心としする金融機関のニーズをふまえたサービスの強化。当局監査の受け入れ、客監査の対応それぞれを行っていく体制とともに、ログデータの常時提供(2015年後半より順次強化予定)、アクセス事前認証機能(Customer Lockbox)、お客様鍵の暗号化、危険リンクなどを“毒味”して安全を確認する「Advanced Threat Protection」などの機能強化も図っていく。
「クラウドにアレルギーのある企業は日本にはまだ多い。マイクロソフトは東西2拠点の日本データセンターよりサービスを提供することで“データは日本から出ない”体制もすでに整えているが、理解度・導入率は他国と比べると少し遅れている。ここについて、特に強固な体制が望まれる金融業界の企業も安心してクラウド化できる体制をしっかり用意することで、クラウド化流れを加速させたい」(日本マイクロソフトの小原専務)
関連キーワード
金融機関 | Microsoft | クラウドコンピューティング | Amazon Web Services | 三菱総合研究所 | Office 365 | Microsoft Azure | Microsoft Dynamics | 電通国際情報サービス | パブリッククラウド | システムインテグレーター | トレンドマイクロ
関連記事
- クラウド化で悩む企業に伝えたい「4つの基本」
企業のクラウド化が急激に進む中、ウチは難しいと悩む企業も多い。「金融クラウドの国内パイオニア」として、自ら率先してクラウド化を進めるソニー銀行のキーパーソンに「どうすべきか、何を考えるべきか」のヒントを聞いた。 - マイクロソフトが「クラウドの国内データセンター設置」を急ぐ理由
クラウドサービス大手事業者による国内データセンター設置化が加速している。IBM SoftLayer向け東京データセンターに続き、マイクルソフトも“クラウド3兄弟”の国内データセンターを開設する。 - 日本IBM、クラウドサービスを使いやすくする「業界業務プロファイル」発表
安全で効率的なクラウドサービス活用を推進するという、11種類の「業界業務プロファイル」を発表した。 - Microsoft幹部が語るWindows Azureの勝算
Microsoftがこのほど日本国内にデータセンターを設けて増強を図ったクラウドサービス「Windows Azure」は、宿敵Amazonを追撃できるのか。キーパーソンに直撃取材してみた。 - マイクロソフトは何を「文化改革」するのか──モバイルとAzureを推進、再び“光る会社”に
「The Microsoft Conference 2014」で日本マイクロソフトの樋口泰行社長が登壇。Windowsの成功にあぐらをかいている──そんなイメージを払拭する、自社の文化改革に挑み、チャレンジャーとしての意気込みと戦略を語った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.