第23回 あるSoftware-Defined商談の失敗例:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)
SDSやNFVは破壊的イノベーション。日本のITマネージャーが頭を悩ませるTCOの削減、いや新しい価値の創造に貢献できる技術です。しかし現実は……?
Software-Defined Storage(SDS)やNetwork Function Virtualization(NFV)といったSoftware-Defined は“破壊的イノベーション”であり、日本のITマネージャーが頭を悩ませるTCO削減に貢献してくれそうです。
しかし、実際に導入するために検討を始めると、前回、前々回と説明してきたスペック要件があり、また、ここでも日本のお国事情に由来する問題が発生します。
Software-Defined商談の失敗例
今回は、実際の商談を例にとって考えていきましょう。
ある顧客はSDS(Software-Defined Storage)に魅力を感じ、出入りのSIベンダーに提案を依頼しました。Software-Defined案件は、ソフトウェアの設定やチューニングなどで高い作業費用を見込めそうです。ですから、SIベンダーの営業であるAさんは何としても受注に結び付けたいところです。
顧客 「SDSの分散ストレージを探しています。容量は10Tバイト、性能は3万IOPSくらいがほしいです。SDS化の目的はTCO削減ですので、価格を重視しています」
これならありがちな依頼です。Aさんは従来型ストレージを見積もる流れで、社内のエンジニアに構成を相談しました。しかしながら、意外な答えが返ってきます。
エンジニア 「容量10Tバイトはよいのですが、性能は何とも言えません。SDSはソフトウェアで処理するため、サーバスペックで性能が大きく変わるんですよ。以前担当した案件のデータは残っていますが、今回とは要件が異なりますので流用できそうにないですね……」
これまでのストレージは、モデルも数種類しかなく、性能と容量からそれほど考えずにモデル選定ができていました。しかしながら、SDSはあくまでソフトウェア。それを動かすサーバは「CPU、メモリ容量、ディスク構成…」といったパーツを1個1個選定していかなければなりません。しかも、ソフトウェア処理であるため、これが出力性能を大きく左右します。CPUだけでも、コア数はもちろん、○○GHzといったクロック周波数でまったく異なる結果になるのです。
もちろん、高性能なパーツを集められば悩むことはありませんが、Software-Definedにする多くの理由は“コスト”です。高くなっては意味がありません。
そこでAさんは、取り急ぎこのエンジニアからメーカーの参考情報をもらい、「参考見積り」という形で顧客に提示します。
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