Windows 10 Creators Updateで、UWPアプリへのシフトが加速する:Enterprise IT Kaleidoscope(2/2 ページ)
そろそろ配信が始まると予想される「Windows 10 Creators Update」では、古いWin32ベースのアプリケーションソフトのインストールを制限する機能が提供される。企業向けには、別のストアを用意できるようになっている。
企業が業務アプリを配信する場合
企業においては、一般のユーザーが見るストアに自社の業務で利用するアプリを登録するというのは問題がある。また、UWPアプリ(Appx)を手動で全てのPCにインストールするのも、手間の問題で現実的ではない。そこでMicrosoftは、企業向けのストアを別に作成できるようにしている。
この機能を利用すれば、オンプレミスのサーバーにストアを作成するだけでなく、Microsoft社のクラウド(Office365のユーザー)に企業独自のストアが用意されて、そこに自社の業務アプリを登録することができる。このストアには、企業が認めた他社のアプリなども登録できるため、従業員がライセンス違反や違法なアプリをインストールしないようにすることもできる(セルフポータルで従業員が企業が認めたアプリをインストールできる)。
便利なのは、一度アプリをインストールすれば、ストアがアプリを監視しているため、バージョンアップなどがあれば、自動的にアップデートしてくれる。これは、企業でアプリを使用する場合、バージョンが異なって、セキュリティホールになったり、操作方法の問い合わせが来たときに、バージョン毎に答えを確認しなくてもいい。ストアを使えば、企業内に複数のバージョンのアプリが存在することはなくなる。常に最新のアプリがインストールされている状態になる。
Windows 10向けのアプリは全てストアからの配布へ
Creators Updateでは、デフォルト設定では、Win32アプリケーションなどのインストールが制限されることはない。しかし、これは始まりであって、後戻りはしないと思われる。筆者自身は、Windows 7の延長サポートが終了する2020年1月を目処に、Win32アプリケーションに対する制限が強められていき、最終的に2023年1月のWindows 8の延長サポート終了時には、Windows 10で動作するアプリのすべてはUWPアプリ化して、ストア経由での配布に変わると考えている。
一部のドライバなどの配布に関しては、新たな方法を考える必要はあるが、ストアというアプリ配布のシステムを用意しても、ほとんど利用されていない状態を大きく変えるために舵を切ったといえる。
Microsoftにとっては、一般のストアで有料ソフトを販売したときには、手数料収入が入るため、できるだけアプリをストアに集めて、ストアをもっと活用してもらおうと考えているようだ。もしかすると、ストアでの手数料収入が見込めるようになれば、Windows 10 OS自体を無償で提供するという選択肢も考えられているのかもしれない。
企業は、このようなMicrosoftの流れを考えて、徐々にUWPアプリの開発、既存のWin32アプリケーションのUWPアプリ化、企業向けストアの採用などを進めて行く必要があるだろう。
特にUWPアプリに関しては、企業での開発経験値が少ないため、まだまだ試行錯誤が続くと考えられる。ただ、数年後にはUWPアプリに完全移行していく可能性があるということを思えば、今から徐々に対処していく必要がある。
Creators Updateはいつリリース?
この原稿を書いている時点では、Creators Updateのリリース時期は発表されていない。しかし、3月の定例セキュリティアップデートにおいて、Windows 10のWindows UpdateのページにCreators Updateに関する項目が追加された。
Insider Previewでも、新たな機能の追加は2月末からは終了して、バグフィック版の提供が行われている。また、Creators Updateのバージョン番号が1703となるといわれている。
今までのWindows 10では、リリースの年月日をバージョン番号としているため、3月中、遅れたとしても4月にはリリースされるだろう。
関連キーワード
アプリケーション | インストール | Creators Update | Microsoft | Windows 10 | 業務アプリケーション | Enterprise IT Kaleidoscope | Office 365 | Anniversary Update | Universal Windows Platform
関連記事
- Windows 10の最初のリリースがサポート終了、複雑すぎるサポートポリシーの中身
Windows 10の最初のリリース対するサポートが3月26日で終了する。Windows 10では「Windows as a Service」というコンセプトが導入されているが、これに基づくサポートの変化について確認しておこう。 - Windows 10は単なるWindows 7の移行先? 真価を問われる2017年
リリースから1年半が経過したWindows 10にとって、Windows 7のサポートが終了する2020年までのこれから3年間は、まさに真価を問われることになるだろう。Microsoftはどんな施策を考えているのか。 - Windows 10 Creators Updateで追加されるセキュリティ機能たち
2017年に入ってもWindows 10の進化は止まることを知らない。次期アップデートのWindows 10 Creators Updateでは3Dなどグラフィック関連が注目を集めるが、今回は企業ユーザー向けの機能に注目してみたい。 - 次期Windows 10のCreators Update 3D機能は企業にメリットあり?
Windows 10の次期アップデート「Creators Update」の新機能は一見企業ユースとは無縁だが、意外な可能性を秘めるかもしれない。2017年の展望も占ってみたい。 - Microsoftが世界中のWindows 10でつくるセキュリティ対策の狙い
Microsoftは、世界中のWindows 10から収集する脅威情報をもとにセキュリティ対策を講じる「Windows Defender Advanced Threat Protection」を構築した。これによってセキュリティ対策はどう変わるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.