APIで社内、そして世界とつながる――リクルートのAI活用、そのキーマンに迫る(4/4 ページ)
自社サービスにAIを積極的に導入しているリクルートだが、その活用を推進する部署がリクルートテクノロジーズにある。彼らがどのようにして業務部門と連携しているのか。そのカギの1つに「API」があるという。
APIで社内外と“つながる”
2017年3月、リクルートテクノロジーズは、機械学習やディープラーニングを用いたソリューションAPI群「A3RT(アート)」を無料公開した。現段階では6種類のAPIが公開されているが、これはもともと社内向けに作られた20種類あるAPIの一部だという。
社内向けに、しかもAIを使った機能のAPIを公開する事例は珍しい。その経緯について、石川さんは「自分たちの負荷の軽減が最初の目的だった」と語る。
「3年ほど前、ホットペッパービューティーのアプリで、ネイルの画像を色やデザインで検索できるシステムをフルスクラッチで作って実装しました。その後『画像検索のノウハウを他でも使おう』といった話が増えてきたときに、それぞれカスタマイズしていると、作業量が膨大になって追い付かなくなってしまいます。そこで共通化できる部分はAPI化しよう、というのが最初の発想でした」(石川さん)
グループ内でAPIを公開するもう1つのメリットとして、石川さんはシステムの持続性を挙げる。各事業のニーズに合わせて都度システムを作ると、エンジニアが持つ知見やノウハウを横展開することはできるが、開発したエンジニア以外には、各システムで共通する部分としない部分の境目が分かりづらく、メンテナンスもしづらい。
APIを使えば、その部分の仕様は明確であるため、時間がたったり、担当者が変わったりしても、“負の遺産”になりにくいというわけだ。APIが事業部門に周知されれば、それを生かした依頼もやってくる。まさにAPIを通じて、IT部門と事業部門がつながっているといえる。
今回、APIの外部公開に踏み切ったのは、社外での使われ方を分析したり、利用者からのフィードバックを得たりすることで、機能をブラッシュアップし、グループ内へ還元したいという意図もあるという。公開から1カ月程度で、利用者(ユニークユーザー)は約400人、コール数は55万件程度と「予想よりも好調に推移している」(石川さん)と話す。
先端技術の応用先が多いというグループならではのメリットを生かしつつ、社外の知見も取り込もうという、リクルートらしいアグレッシブさが感じられる。新しいサービスを生むために、IT部門やエンジニアが社内外とどのようにつながるか、という観点で学べる点は多いはずだ。
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