Excelすら使えなかった新人が、2年で「BIエバンジェリスト」になれた理由:「セルフサービスBI」セミナーリポート(2/4 ページ)
データ分析に取り組む企業が、必ずと言っていいほどつまづく「人材」の問題。ビジネスの現場でデータを扱う人材をどう育てればいいのか。その方法を、大阪ガスとホテルおかだの事例から見てみよう。
BI普及のポイントは「やってみせ、言って聞かせて、させてみる」
かくしてBIの“エバンジェリスト”になった高木氏。現在は、大阪ガス社内やグループ会社のビジネス担当者に対してデータの「見える化」やBIツール「Tableau」の活用促進を行っている。高木氏は、企業におけるセルフサービスBI普及のポイントは、山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」に尽きると言う。
「Tableauは多様なデータを容易に取り込め、アウトプットの表現力の豊かなところがいいですね。普及のためには、普段使いしているところを見せるのが大切です。人間はあまのじゃくなところがあり、他人から強制されると拒否反応を起こしやすい。でも、自分から興味を持ったこと、自分で見つけたことは喜んで受け入れます。BIツールの導入も『面白い』『遊んでみたい』と言わせることができれば勝ち。スムーズに進みます」(高木氏)
その後は、ビジネス担当者のニーズを反映させたプロト版を作り、試用期間いっぱい「させてみる」。その段階で、もうBIツールの便利さを確信し、手放せなくなるケースが多い。ビジネス担当者の日ごろの努力を大いに「ほめてやり」、それをさらにブラッシュアップできることをアピールすれば、人は必ずBIツールを使う、というのが高木氏の見方だ。
「せっかくBIツールの有用性を伝えるのであれば、BIツール自体をビジネス担当者とのコミュニケーションの道具としてフル活用してください。ビジネス担当者と会話をして、様々なニーズを聞き出すことができます」(高木氏)
ジリ貧だった老舗ホテルにデータ分析を導入
セミナーの後半では、箱根湯本の老舗ホテル、ホテルおかだ 取締役営業部長の原洋平氏が登壇した。ホテルおかだは、原氏の祖父が1953年にわずか4室で創業。現在は122室で、667人収容するまでに業務を拡大。箱根湯本でも最大規模のホテルとして有名だが、原氏が入社した2008年ごろは、ジリジリと営業利益が減少する傾向にあったという。
当時は稼働率や集客が見込める団体客が大事にされ、利益や売上よりも団体集客を重視する考え方が根付いていた。業務成績を集計したいくつかの帳票はあったものの、「どんぶり勘定」の経営だったことは否めない。必要に応じて、レポートを作成することもあったが、現状を追認するための「理由付け」になってしまっていた部分もあった。結局、数字を前にしても、感覚的な議論に終始し「具体的に何をすれば良いのか?」という結論を導き出せるまでには至らなかったのだ。
そこで原氏はデータの分析に着手。まずは、データの“透過性”を高めることから始めた。例えば、部門ごとの責任範囲が分かるほどの「細かさ」や、あらゆる期間で比較できる「時間単位の柔軟性」、そして必要なときにレポートをすぐに共有できる「簡単さとスピード」を追求した。
「この結果、曖昧な議論は減り、責任ある行動が増えてきたと思います。ただ、それらの指標が本当に重要なのか、経営体質の改善につながるのかと、さらに疑問を感じるようになりました」(原氏)
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