約3億人のデータを保持する「Twitter」は、人工知能をどう活用しているのか(3/3 ページ)
先進的なIT企業では、ビジネスやサービスに人工知能を使うのが当たり前になりつつあるが、アクティブユーザーが3億以上という老舗SNSの「Twitter」では、どのように活用しているのだろうか。
リアルタイム性を担保する「知識の蒸留」
このようにTwitterでは、人工知能の活用が進んでいるものの、深層学習を始めとして膨大なマシンパワーが必要な処理が多い。処理の負荷が高まれば、それだけ処理が遅くなり、待機時間が長くなってしまう。
先ほど挙げた、画像の自動トリミング処理では、処理速度を上げるために「知識の蒸留(knowledge distillation)」と呼ばれる方法で、処理数を減らしている。これは、大きくて複雑なニューラルネットの学んだ知識や推論結果を、小さくて軽量なモデルの学習に利用する(継承する)というもので、精度は下がるものの、実用には耐えられるレベルになるという。
トリミングの範囲を決めるだけならば、数ピクセル単位の細かいチューニングは必要ない。さらに演算能力を無駄に浪費する処理を除去する「剪定(せんてい)」という処理も加え、トリミングのスピードが従来比で10倍になったそうだ。「こうしたディープラーニングにおける最新技術で、Twitterのリアルタイム性を担保している」と森田氏は話す。
ユーザーの属性情報も深層学習で推察
森田氏が最後に紹介したのは、Twitter広告におけるAI活用だ。膨大なユーザーがいるTwitterでは、いかにして広告を表示するユーザーを決めていくのかが問題となる。当然、広告主側もおおまかなターゲットの要望は出すものの、ターゲットに合致するユーザー全てに広告を出そうとすれば、予算が間に合わなくなるケースがほとんどだ。
そのため、Twitterではあらかじめユーザーの年齢層や性別、興味関心といった情報をデータベースに保存しているという。とはいえ、Twitterアカウントを作成する際に、年齢や性別といった情報を登録することはない。こうした情報もまた、ツイートの内容や利用動向、フォロー関係などをもとに深層学習で推定し、一定の間隔で更新し続けているのだという。
これを広告の内容を登録したデータベースと突き合わせつつ、最後に広告にクリックした人に似た属性の人を探し、広告に反応する精度を高めていく。各アカウントにこれらの要素を反映したスコアを付け、順位が高いアカウントから広告を表示するわけだ。
森田氏によれば「米国では、AIと言えばほぼディープラーニングを指す」とのことだが、Twitterでもディープラーニングの活用はこれからといった状況だという。むやみに最新技術を使うのではなく、ユーザーのニーズと合致させながら一歩ずつ進めていく――老舗SNSサービスのAI活用からは、そんな姿勢が伺える。
関連記事
- Twitterに「タイムラインの優先表示」機能(無効化可能)
Twitterが、タイムラインを改変するのではなく、補足する新機能を追加した。ユーザーにとって重要な(とアルゴリズムが判断した)ツイートを一時的に優先表示し、リフレッシュすると通常の新着順タイムラインに戻れる。この機能はオプションで無効にでき、従来のタイムラインは今後もそのままだ。 - Twitter、英AI企業Magic Pony買収で動画サービス強化へ
動画サービスに注力するTwitterが、動画圧縮や品質向上のための機械学習技術を手掛ける英Magic Pony Technologyを買収した。 - Twitter、ついに初の黒字に
Twitterが、IPO以来初の黒字を達成した。売り上げは2%増、MAUは4%増だが、米国のMAUは前期より100万人減った。 - Twitter、検索結果も非時系列に 機械学習による優先順位を採用
Twitterが、検索結果をこれまでの時系列から関連性の高い順での表示に切り替えたと発表した。2月に導入したタイムラインでの非時系列表示と同様に、機械学習でランクを決める。 - 月額9900円、Twitter広告の新たなメニュー「オートプロモート」の特徴を5つのポイントで解説
Twitter Japanは、月額9900円で毎日10ツイートとプロフィールを広告化できる「オートプロモート」を日本で提供開始した。その特徴を5つのポイントで整理する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.