ふがいないIT部門にガートナーが喝 まず、DX推進の舵を“握れ”:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業におけるデジタル変革の推進役は誰なのか。ガートナーは独自調査を基に「ITリーダーが“舵を握れ”」と主張する。なぜ、舵を「切れ」ではなく「握れ」なのか。
デジタル変革へ中心的な役割を担うつもりがないIT部門に“喝”
ガートナーの調査では、こんなことも聞いている。先述の第2のハードルでテーマ探索とあったが、回答者はデジタルビジネスのテーマとして何を期待しているのか。図1の調査で「取り組んでいる」とみた回答者に複数選択可で聞いたところ、「新たなビジネスにおける売上拡大」が53.0%でトップとなり、次いで「現行のビジネスにおける」と前置きしたうえで、「売上拡大」(45.5%)、「顧客満足度向上」(43.9%)、「コストや利益の改善」と「生産性向上」(それぞれ33.3%)と続いた。
片山氏はこの状況について、「新規だけでなく現行ビジネスのデジタル化を考えることも重要だ」とした一方、選択回答としてもう1つあった「従業員の満足度向上」の回答率が1.5%にとどまったことから、「働き方改革の観点からも、これからは従業員の満足度向上にもデジタル技術を活用すべきだ」と指摘した。
次に同氏が調査項目として紹介したのは、「デジタルビジネスを推進する場合に中心的な役割を担う部署はどこか」という設問だ。図2がその結果である。見ての通り、「事業化判断」「アイデア創出」「プロジェクト発案」とも10%以下となり、「テクノロジー評価」さえも55.0%と、残りの半数近くがデジタル技術の評価に不安があることを浮き彫りにした。
この結果を受けて同氏は、「回答者であるIT部門は、デジタル変革に向けて中心的な役割を担うつもりがないことを意思表示している」と分析する。そして、だからこそ講演のテーマとして、DX推進の舵を「切れ」ではなく「握れ」、つまり主導的に舵を握る役割を担ってほしいとの思いを込めたのである。
図3は、同氏が講演の最後に紹介した「デジタルビジネス推進における課題」の調査結果である。トップはやはり「人材不足」だ。ただ、この図はガートナーがあらかじめ設定した回答例もそれぞれ意味深く感じたので掲載しておいた。
片山氏は人材不足について、「IT要員がデジタル活用のスキルを磨くのは当然として、社内で有望な人材を発掘するのもITリーダーの重要な役割だと認識してほしい」と語るとともに、「そうした人材として、若手だけでなく、年配の社員も隠れた候補になる」と訴えた。
同氏の話を受けて、筆者の意見も述べておきたい。「舵を握れ」という表現に共鳴したので、今回本稿で講演内容を取り上げさせてもらった。さらに言うならば、経営トップが自ら見込んだITリーダーにそうした役割とともに権限と責任を持たせて、それを社内に明確に示すことが非常に重要だと、これまでのさまざまな取材を通じて痛感している。
そしてもう1つ、年配社員の活用もぜひ広げたいものである。ビジネスおよびマネジメントの豊富な経験とノウハウを生かすことは、やり方次第で十分に可能だと考える。年配社員もまず頭を柔らかくして、さまざまな活用事例などを勉強すれば、自身の積み重ねた知恵と相まって新しいアイデアが生まれてくるのではないだろうか。そうした活動に向けてモチベーションも高まるはずだ。
そんな好循環を生み出す意味でも、ITリーダーにはぜひデジタル変革推進の舵を握ってもらいたい。
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