変わりつつあるビジネスモデル――NTTデータは「システムインテグレーター」を名乗り続けるのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
システムインテグレーター(SIer)として確固たる地歩を築いているNTTデータ。ただ、同社にとっても新たなデジタル化への対応は必然だ。果たして、同社はシステムインテグレーターを名乗り続けるのか。
顧客のビジネスモデルを動かすSIer、でも名乗り続けるかは……
1つ目の「グローバルデジタルオファリングの拡充」については、インダストリーや技術の注力領域を定め、積極的に投資していくことで“強み”(オファリング)を創出し、マーケティングと技術活用支援を一体とし、グローバル規模での連携を加速。具体的には、個別の顧客へのロイヤルティープログラムを拡充するとともにインダストリー内連携を加速し、同時に対外リレーションの高度化や成功事例の共有と加速を推進する。
また、インダストリーの知見を集約したデジタルオファリング戦略を策定し、オープンイノベーションを活用しながら、顧客との共創プロジェクトへ積極的な投資を進める。これにより、提供価値の高いオファリングを創出するねらいだ。さらに、最先端技術の知見を蓄積する拠点(Center of Excellence)の拡充によってアセットの集約と活用を加速し、迅速なオファリング創出と展開を実現する。
これらの施策によって、グローバル一体となってデジタルビジネスの拡大を推進するとしている(図表3)。
2つ目の「リージョン特性に合わせた顧客への価値提供の深化」については、リージョン特性に合わせた「4D Value Cycle」の推進によって、顧客への価値提供の深化により、2018年度末で70社となっている年間取引額50億円以上の顧客基盤を80社以上に拡大する。4D Value Cycleとは、「Discover(目利き)」「Design(企画)」「Develop(つくり)」「Drive(活用)」のサイクルからなる同社の価値提供モデルである。
3つ目の「グローバル全社員の力を高めた組織力の最大化」については、グローバル共通の価値観でコラボレーションを推進し、個の力を高めながら組織力の最大化を図る。具体的には、社員のプロフェッショナリティの最大化として、全社員のデジタル対応力を高めるとともに、社員の多様な自己実現に沿って制度設計などを見直し、社員エンゲージメントの向上を図るとしている。
これら3つの戦略を見ると、新中期経営計画は、前の計画から引き続いてグローバルを成長領域とするとともに、デジタル化への対応に一層注力する姿勢がうかがえる。そこで、中期経営計画の節目を迎えたタイミングで、「NTTデータは今後もSIerを名乗り続けるのか。それとも新たな代名詞を模索するのか」と、会見の質疑応答で聞いてみた。すると、本間氏は次のように答えた。
「システムインテグレーション(SI)というと、少し古いビジネスモデルのイメージがあるようだが、そのコアになっているのはアプリケーションで、それこそがお客さまのビジネスモデルを動かしている。クラウドが広く使われるようになったとしても、それは変わらない。従って、アプリケーションをきちんと作る力やインテグレーションする力は必ず求められる。それがSIであり、当社のコアコンピタンスだと考えている」
さらに、こう続けた。
「ただ、ITサービスの提供の仕方はこれから大きく変わっていくだろう。SIerというと、これまでは受注型のSIが中心だったが、これからはデジタル化の進展に伴って企画型のソリューションサービスが増えていくと見ている。ということで、SIの仕事は大事にしていきたいが、今後もSIerを名乗り続けるかどうかは分からない。何かいい呼び名があれば、教えていただきたい」
物腰が柔らかく、どんな質問にも丁寧に答える本間氏に、最後はほほ笑みながらこう返されてしまった。「SIerとして進化していく」と言わず、「何かいい呼び名があれば」と答えたのが印象的だった。これからも同社には折りに触れて同じことを聞いていきたい。
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