「NTT Comのパブリッククラウドサービス終了」をどう捉えるか、これまでの変遷から読み解く:Weekly Memo(2/2 ページ)
NTTコミュニケーションズが2012年から提供してきたパブリッククラウドサービスを2020年末で終了すると発表した。この動きをどう捉えるか。これまでの同社のクラウド事業における変遷から読み解いてみたい。
クラウドの利用形態より前に考えるべきデータ利活用の在り方
以上が発表の概要で、いわば「NTT Comがパブリッククラウドサービスから撤退」したことになるが、その後そんな見出しを打った記事は、筆者が確認した範囲で見当たらなかった。
それというのも、前にも触れたように、ここ数年はEnterprise Cloudの展開に注力していることを明言してきたからだ。
実は、同社のクラウド事業は、4年前から本コラムにおいて、庄司哲也氏(NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長)がメディア向けの年次事業戦略説明会で話してきた内容を筆者なりの視点でまとめてきた。それを見ると、興味深い変化が見えるので、以下に要点をピックアップする。
まず、2016年4月18日掲載の「NTT Comはクラウド市場で“ITジャイアント”に勝てるか」では、Enterprise Cloudを「パブリックとプライベートを“いいとこ取り”したクラウド」と説明。これによって庄司氏が言う「ITジャイアント」、すなわちAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといったハイパースケールクラウド事業者と「渡り合っていけるようにしたい」と語っていた。
それが、2017年4月17日掲載の「NTT Comがクラウド戦略を転換、その真意は?」では、「これからはオンプレミスとクラウドのハイブリッド利用が中心になるのではないか」と語り、Enterprise Cloudをハイブリッドクラウドのソリューションにするという流れを明示した。
そして、2018年4月16日掲載の「『クラウド』から『データ利活用』へ、NTT Comが戦略キーワードを変えた理由」ではタイトル通り、クラウドからデータ利活用へと着眼点を変え、Enterprise CloudをDX支援ソリューションとして捉えて前述した最新のSmart Data Platformへの道筋を作った。
こうした4年間の変化を改めて見ると、NTT Comはユーザーに対して1つの大事なメッセージを発信しているように感じる。それは、「企業は、クラウドの利用形態以前にデータ利活用の在り方を考えるべきではないか」ということだ。特にDXの取り組みでは、データ利活用の在り方が起点となる。その意味で、Smart Data Platformの提案は「時」を捉えた的確な戦略だといえよう。
それにしても、残念なのはCloudnのサービス終了だ。サービスを開始したときは、いよいよ日本にもAWSに真っ向から対抗できそうなパブリッククラウドサービスが登場したということで、大きな期待が寄せられた。
AWSにはEC、Microsoftにはソフトウェア、Googleには各種ネットサービスという確固たる収益源がある。NTT Comにもキャリアとしての安定した資金があるから、ハイパースケールクラウド事業者の一角に名を連ねられたのではないか、と筆者もポテンシャルを強く感じていた。
ただ、やはり3社のパワーは端から見ていても桁外れだ。NTT Comにとっては最初から無謀なチャレンジだったのかもしれない。当時は富士通やNECなども日本発のハイパースケールクラウド事業者に名乗りを上げており、夢を追いかけたのはNTT Comだけではなかった。
今回の発表会見で説明に立ったNTT Comのクラウド分野のエバンジェリストである林雅之氏は、同社のスタッフとともにCloudnのロゴが入ったTシャツを着て臨んだ。林氏によると、同社のクラウドサービスはCloudnが起点になってEnterprise Cloudに発展したという。今後はそのEnterprise Cloudを軸としたSmart Data Platformをどれだけ広く浸透させていくことができるかが、同社の新たなチャレンジだ。
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