Google Cloudは競合と何が違う? 5つのポイントから探る:Weekly Memo(2/2 ページ)
Google Cloudが自社イベントでクラウドサービス「Google Cloud」の最新動向について説明した。どう進化したのか。競合するクラウドサービスと何が違うのか。ビジネス戦略を中心に筆者なりの視点で5つのポイントを挙げてみたい。
ファストリの柳井氏が語った「Googleと仕事をしたい理由」にもポイント
3つ目は、データクラウドにおける業種別ソリューション展開への注力だ。寳野氏は図3を示しながら「Google Cloudのデータクラウドは単なるプラットフォームではない。お客さまの業界ごとのデータを活用したイノベーションを支援するための業種別データソリューションも兼ね備えている。これによって、お客さま個別のビジネス課題にも直接、対応することができる」と説明した。
クラウドサービスの業種別ソリューション展開には競合も注力しているが「業種別データソリューション」を打ち出したのは、データクラウドを前面に押し出したGoogle Cloudならではの戦略だ。ただ、業種別展開は、各業種に精通したパートナー企業との連携をいかに深く広げていくかが、ビジネス拡大のカギを握る。
4つ目は、Googleの企業文化に対するユーザー企業の期待だ。AIやアナリティクスなどの最新技術が活用できることを採用理由に挙げる企業が多いのは先に述べたが、もう1つ、多くの企業がGoogle Cloudに期待していることがある。
今回のイベントで、SAPの最新ERP「S/4HANA」を「Google Cloud Platform」(以下、GCP)で稼働させた事例を紹介したLIXILの岩﨑 磨氏(常務役員Digital部門システム開発運用統括部リーダー兼コーポレート&共通基盤デジタル推進部リーダー)は、「DXを推進するためには最新技術を活用するだけでなく、企業文化や社員のマインドセットも変革していかなければならない。そのためにもGoogleの自由でオープンな文化を取り入れたいと考えた」と話した(図4)。
また、ファーストリテイリングも従来のアパレル業から「情報製造小売業」への変革を目的としたプロジェクトでGoogle Cloudを2018年から活用している事例を紹介したが、この協業については、同社の柳井 正氏(代表取締役会長兼社長)とGoogle Cloudの当時CEOのダイアン・グリーン氏が2018年9月に実施した記者会見が強く印象に残っている。
柳井氏はこの会見で「自分たちと立ち位置が違う、持っている技術やノウハウが違う、国や文化が違う、そういう企業や人たちと一緒に仕事をすることでイノベーションというものが起きる。私は、当社がGoogleと一緒にイノベーションを起こせると確信している」と語っていた。
Google自身がサービス開発で培ったノウハウを得られる点に魅力を感じて一緒に仕事をしたいと考える企業は多いはずだ。この点はGoogle Cloudにとっても大きなアドバンテージだろう。
5つ目は、Google Cloudの日本における経営トップの意欲と覚悟だ。平手氏が基調講演終了後、記者会見に登壇した際、質疑応答で「今回のイベントで説明があったビジネスの強化で、特にIaaS領域でGCPは先行するAWSやAzureといった競合クラウドを追撃できる態勢が整ったとお考えか」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「冒頭で話したように、この1年余りで多くの企業において変革に取り組む姿勢が変わった。その変革のキーになるのはデータの活用だという認識も広がっている。データ活用については、検索エンジンをベースにビジネスを広げてきたGoogleには多様なノウハウが蓄積されている。そうしたことから、今、多くの企業の変革を支援できるクラウドとしてお役に立てるのはGoogle Cloudだと確信している」
質問に対する直接の回答がないのは想定していたが「(Google Cloudにとって)追い風が吹いている。役立つ自信がある」との答えだと、筆者は受け取った。意欲も覚悟も十分なようだ。これまで幾度か同様のことを書いてきたが、今度こそGCPはいよいよ日本でAWSやAzureを追撃する態勢が整ったようである。今後の行方を大いに注目したい。
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