SAPジャパンの2023年事業戦略にみる「日本企業のDXの針路」:Weekly Memo(1/2 ページ)
2022年も早や12月。来るべき2023年に向けて日本企業はDXの針路をどうとればよいのか。SAPジャパンの鈴木洋史社長に「2022年の総括と2023年の戦略」を聞くとともに、その針路についてアドバイスをもらった。
「2022年はクラウドカンパニーへと大転換を遂げた。2023年はさらにパブリッククラウドサービスに注力していきたい」
こう語るのは、SAPジャパンの鈴木洋史氏(社長)だ。2020年、2021年に引き続き、今年も「2022年の総括と2023年の戦略」をテーマに単独取材の機会を得た。今回のテーマへの回答を端的に表したのが上記の発言になる。
2023年はパブリッククラウドサービスに注力
鈴木氏は1年前の本連載記事で、「2022年はクラウドカンパニーへの大転換の年にしたい」と宣言した。とりわけ、同社の主力事業であるERP(統合基幹業務システム)の最新版「SAP S/4HANA」のクラウド版「S/4HANA Cloud」を中心とした動きについて、「クラウド事業はこのところ大変好調に伸長している」と強調した。
ちなみに、SAPグローバルの直近四半期(2022年7〜9月)の売上高の伸びは2021年同期比25%増だった。「日本はこの伸び率を大きく上回っており、年内もこのまま推移する見通しだ」(鈴木氏)とのことだ。さらに、S/4HANA Cloudを中心としたクラウドサービス群で同社がDX(デジタルトランスフォーメーション)支援ソリューションとして打ち出している「RISE with SAP」も同様の伸びを示しているという。
こうした勢いの中で、SAPジャパンの2023年の重点戦略は何か。鈴木氏はまず、2022年の戦略として掲げた「クラウドカンパニーへのさらなる深化によってお客さまの成功に寄与する」「社会課題の解決を通じて、お客さまおよび従業員から選ばれる会社になる」「お客さまがサステナブルな企業へ変革することを支援する」といった3つの事業方針を引き続き推進していくとした上で、「2023年は特にS/4HANA Cloudのパブリッククラウド版に注力していく」と強調した。
S/4HANA Cloudにはパブリッククラウド版とプライベートクラウド版がある。同氏によると、2022年は大手企業でプライベートクラウド版の採用が広がった。そこで、「2023年は大手だけでなく、中堅・中小規模のお客さまにも広く利用していただけるように、パブリッククラウド版を強くお薦めしていきたい」という。
これは、ユーザー企業からすると「SAPの最新ERPをクラウドサービスとして利用する」ということだ。ユーザー企業が所有し、運用するプライベートクラウド版とは、同じクラウドでも提供形態が根本的に異なる。
SAPにとってパブリッククラウド版への注力は顧客層を広げる狙いがあるが、ユーザー企業にとってはどんなメリットがあるのか。パブリッククラウドサービスの特徴である「運用、保守の軽減」「使った分だけの課金」「常に最新機能が使える」といったメリットはもちろん享受できるが、鈴木氏は「Fit to Standard」というキーワードを挙げて次のように説明した(図1)。
「標準機能を可能な限り活用するFit to Standard型の導入によってERPをシンプルに使っていただく。一方で、ERPのデータを活用してDXをどんどん進められる仕組みを備えたRISE with SAPによって、お客さまのビジネスやマネジメントの生産性が向上して、それぞれの分野で競争力を発揮していただきたい」
クラウドのメリットというと、とかくオペレーションの話になりがちだが、鈴木氏は「生産性の向上」と「競争力の発揮」を挙げた。どちらも非常に大事なポイントだ。
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