富士通の2024年調査から考察 「ビジネスとサステナビリティを両立させている企業」の特徴は?:Weekly Memo(2/2 ページ)
富士通の調査によると、サステナビリティを最優先事項とする企業の割合が上昇している一方で、対策の進捗(しんちょく)は芳しくない。サステナビリティをビジネスと両立させている企業は、その他の企業と収益や株価、市場シェアにおいてどのような違いが出ているのか。富士通の最新調査から考察する。
ビジネスもサステナビリティもブランド価値向上対策
図4は、今回の調査対象の中における「チェンジメーカー」の割合を示したグラフだ。富士通によると、チェンジメーカーとは「SXの取り組みが進んでおり、ビジネスとサステナビリティを両立させている企業」を示す。
全体の11%がチェンジメーカーで、右上のグラフが国別チェンジメーカーの割合、下のグラフが業種別チェンジメーカーの割合を示している。
ちなみに、国別チェンジメーカーに日本は入っていない。これは「調査の都合によるもので、別途調べたところ日本は4%程度」(富士通)とのことだ。国別にみると「ドイツ」と「フィンランド」が、業種別では「資源・エネルギー」が高いのが印象的だ。
いずれにしても、「ビジネスとサステナビリティを両立させている企業は全体の11%」ということが明らかになった点で、図4は貴重な調査結果だと思う。
図5は、図4で述べたチェンジメーカーがその他の企業と比べて、過去12カ月のビジネスパフォーマンスがどれだけ増加・向上したかを示したグラフだ。ビジネスパフォーマンスとして取り上げた12の指標の中で、同社では効果が分かりやすい「収益」「株価」「市場シェア」に注目していた。その3つも含め、全体として効果が上がっていると捉えていいだろう。
こうした調査結果を踏まえ、富士通はチェンジメーカーの特徴として、「SXを通じて長期的な価値を生み出すことに重点を置く視点を持つ」「組織の枠組みを超えてパートナーと連携し、データを利活用する能力」の2つを挙げた。
図6は、その一つであるチェンジメーカーの長期的視点を踏まえ、SXの取り組みを推進する主な動機について、チェンジメーカーとその他の企業を比較したグラフだ。この結果について同社は、「チェンジメーカーはサステナビリティの推進が『ブランドイメージ・評価向上』につながり、それに伴ってビジネスを成長させることを長期的視点で捉えている」との見方を示した。
筆者もこの見方にピンと来た。ビジネスとサステナビリティという直接的には相反する関係にあるものを強引に両立させようとするのではなく、ビジネスもサステナビリティもブランド価値を高めるための取り組みという姿勢で臨むべきではないか。筆者はブランドの本質的な意味は「信頼」だと捉えている。企業にとってはビジネスもサステナビリティも顧客や取引先、さらには社会的な信頼に基づいた活動だ。その中で両方の取り組みにおいて成果を上げるのが、それこそ経営手腕ではないか。
これからはこの考え方や取り組み姿勢を広めるためにも、引き続き「ビジネスとサステナビリティはどうすれば両立するか」と問いかけ続けていきたい。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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