音楽プレーヤーやイヤフォンやヘッドフォン、最近ではテレビやサウンドバー(アンプ付きスピーカー)などで「ハイレゾオーディオ」対応をうたうものが増えています。
これらのサウンドデバイスでいう「ハイレゾ」とは一体何なのでしょうか。ハイレゾオーディオは、音楽を聞く際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ハイレゾは「High Resolution(ハイレゾリューション)」の略語です。ハイレゾリューションは日本語にすると「高解像度」という意味となります。
「解像度」という言葉でピンと来た人もいるかもしれませんが、ハイレゾは元々、パソコンにおいてシステムの標準よりも高い画面解像度(ピクセル/ドット数)で画面表示できることを示す用語でした。
昔のパソコンは、NEC(現在のNECパーソナルコンピュータ)の「PC-9800シリーズ」なら640×400ピクセル、現在のほとんどのパソコンの源流となっている「PC/AT互換機」なら640×480ピクセルが標準解像度でした。これらの解像度よりも高い表示を行えるグラフィックス(描画)機能を備えるパソコンは、「ハイレゾパソコン」と呼ばれていたのです。
現在は、HD(1280×720ピクセル/1366×768ピクセル)どころか、フルHD(1920×1080ピクセル)や4K(3840×2160ピクセル)といった高解像度表示が“当たり前”になってしまったので、画面解像度を示す用語としての「ハイレゾ」は事実上死語となってしまいました。
サウンドデバイスにおける「ハイレゾ」は、端的にいうと音楽CDまたはDAT(デジタルオーディオテープ)を超える音質を示す用語として使われています。
デジタル化された音源では、アナログ音声をデジタル化する際に1秒間に何回サンプリング(標本測定)するかを示す「サンプリング周波数」(単位:kHz)と、信号に含まれる情報量を示す「量子化ビット数」(単位:bit)の2つが音質を大きく左右します。具体的には、サンプリング周波数は「表現できる音域(音の高さの範囲)」、量子化ビット数は「音の大小と細かさ」に影響します。
音楽CD(規格上の正式名称は「CD-DA(Compact Disc Digital Audio)」)とDATの規格上のサンプリング周波数と量子化ビット数は以下の通りです。
定義上は、上記のサンプリング周波数または量子化ビット数についてどちらか、あるいは両方が音楽CDやDATを超えるものが「ハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾオーディオ)」ということになります(片方だけ超えるものは、もう片方は音楽CD/DATの規格を満たす必要があります)。
音楽CDの規格が策定されたのは1980年、DATの規格が策定されたのが1989年。当時としては非常に“高音質”だったのですが、それでも音の“情報”の一部をカットせざるを得ませんでした。しかし、音楽を収録したり再生したりするデバイスの進化、インターネットの高速化など、従来より“密度の高い”音楽を楽しむ環境が整ってきたことから、2010年代後半からハイレゾオーディオが盛り上がり始めたのです。
ハイレゾオーディオを「ハイレゾ」で楽しむには、デバイスと音楽データ(音源)の両方がハイレゾオーディオに対応していなければいけません。
日本の電子機器に関する業界団体「JEITA(電子情報技術産業協会)」では、ハイレゾオーディオを先述の通り「音楽CDまたはDATを超えるスペック」と定義しています。一方で、日本のオーディオ産業に関する業界団体「日本オーディオ協会」では、JEITAよりももう少し細かい定義付けを行い、それを満たす商品には「ハイレゾロゴ」を付与することを認めています。
では、どういうデバイスであればハイレゾオーディオを再生できるのでしょうか。日本オーディオ協会が定めた定義に従うと、以下の条件を満たすデバイスが「ハイレゾ対応」ということになります。
プレーヤー(再生デバイス)という観点では、最近のパソコンやスマートフォンの多くは条件をほぼ満たしています。ただし、音声をハイレゾ対応のヘッドフォン、イヤフォンやスピーカーに出力している時のみ対応というケースがほとんどです。パソコンの場合は、設定を変えないとハイレゾ出力できないこともありますので気を付けましょう。
これからハイレゾオーディオデバイスを買う場合は、先述のハイレゾロゴを目印に選ぶと間違いないでしょう。
では、ハイレゾ対応デバイスにはどのようなものがあるのでしょうか。幾つかピックアップしてみました。
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