NHKの人気番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で初となるアニメの主人公へのインタビュー企画として「エレン・イェーガースペシャル」の放送が決まり、今大きな話題を呼んでいます。
11月4日に放送予定のシリーズ最終回「進撃の巨人 The Final Season 完結編(後編)」を控え、全世界のファンが見守る中、エレンは一体何を語るのかその胸中が明かされるのではないかと期待が高まっている状況です。
そんな中忘れてはいけないのがエレンと共に戦い続けてきた声優・梶裕貴さん。梶裕貴さんと言えば運命に抗い続けるエレンの怒りの演技が印象的ですが、その対極にあるような意外なキャラクターも演じています。
今回紹介する「梶裕貴さん主演作品」を見ながら、「進撃の巨人」を含めその他の作品でも大活躍する梶裕貴さんの幅広い演技をぜひ味わってみてください。
フリーライターとして、家電、家具、アニメ等の記事を担当。大学時代から小説や脚本などの創作活動にはまり、脚本では『第33回シナリオS1グランプリ』にて奨励賞を受賞、小説では『自殺が存在しない国』(幻冬舎)を出版。なんでも書ける物書きの万事屋みたいなものを目指して活動中。最近はボクシングをやりはじめ、体重が8kg近く落ちて少し動きやすくなってきました。好きなのものは、アニメ、映画、小説、ボクシング、人間観察。好きな数字は「0」。Twitter:@kirimachannel
コミックスシリーズ累計発行部数が全世界1億2000万部を超えたダークファンタジーの傑作「進撃の巨人」。梶裕貴さんと言えば、何よりもまず「進撃の巨人」の主人公である“エレン・イェーガー”を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。
“怒り”について辞書を引いたら真っ先にエレンの姿が出てきてもおかしくはないほど、エレンの怒りの表現は印象的で見る者・聞く者のハートを激しく刺激します。
巨人から身を守るために壁に逃げ込み偽りの平和を築く人類を「家畜だ!」と断罪し、巨人に母親が食われる地獄を目の当たりにして「駆逐してやる!」と叫ぶ、怒りの化身のようなエレン。そんな怒りを体現し続けるエレンが憑依したかのような、梶裕貴さんの鬼気迫る演技に身震いさせられる作品です。
喉がはち切れそうな、ややかすれながらも地を震わすような凄みのある怒声は一度聞くと忘れられないはず。また10歳の頃のエレン、調査兵団に入ってからのエレン、大人になって闇落ちしてからのエレンと、年齢ごとに繊細に声の調子を変化させている点も魅力的なポイントです。純真無垢な声から、世界の真相を知り絶望してからの口元でボソボソと話す低めの鬱っぽい声まで1人の人物でありながらも幅広い表現が展開されます。
さらにエレンが手をかんで巨人になろうとするシーンでは梶裕貴さん自身もエレンと同化するかのように手をかんで声を出しており、強烈な役者魂が込められている1作でもあります。エレン役に”心臓を捧げる”梶裕貴さんの演技にぜひ注目してみてください。
2012年に放送がスタートしてから高い人気を獲得し、アニメや漫画、小説、ゲーム、舞台と幅広く展開している近未来SF作品・「サイコパスシリーズ」。魂を数値化する巨大監視ネットワーク・シビュラシステムによって一応の平和が実現している社会で活躍する、厚生省公安局の刑事たちの姿を追った物語です。
2020年に放送されたシリーズ3作目となる「サイコパス3」では、新たな主人公である慎導灼(しんどうあらた)の声を梶裕貴さんが務めています。アラタは他人には理解できないような特殊な事情と能力を持つ人物として登場します。
父の謎の死以降、父親の車でしか熟睡できないという背景を抱え、父の死の真相に近づくために刑事なることを決意。そんなアラタの一番の特徴は特A級メンタリストという肩書を持ち合わせ、高度な共感能力を発揮して犯人をはじめとした対象者になりきるというものです。
極度な集中力を伴うのと、深く潜り過ぎると自分を見失うリスクがあるなど非常に危険な能力でもあります。捜査に没頭するあまりひどく消耗したり、おかしくなりそうになったりとアラタの心拍数が上がっていく様子が声の演技で細かく表現されています。
また外見はゆるふわのやや少年っぽさを残した青年なので、梶裕貴さんの柔らかな少年ボイスがピッタリとハマるキャラクターとなっています。ひょうひょうとしており、感情の起伏がほとんどないこともあって、内面の見えない不思議な雰囲気が醸し出されています。
アラタは正義に関する独自の考えを持っており、犯罪係数に応じてトリガーが解除されるドミネーターの指示に疑問を抱く場面もあります。そんな時も激しく叫ぶのではなく、正義とは何かをあくまでも静かに語る点が特徴的です。知的な雰囲気の中に確かに凄みを感じるような繊細な声の演技が展開されるので、エレンとはまた違った良さが感じられるでしょう。
ラブコメ作品として高い人気を獲得し、その後のラブコメの形式に大きな影響を与えた「からかい上手の高木さん」。ラブコメのジャンルでは珍しく第3シリーズまで続き、劇場版まで公開されるなど根強い人気を獲得している作品です。梶裕貴さんは本作の主人公であり中学生のピュアな少年でもある西片を演じています。
梶裕貴さんと言えばエレンの凄みのある叫び声が印象的ですが、ピュアな少年ボイスも特徴の1つです。そんな少年ボイスの良さを最大限に感じられるのが、西片というキャラクター。超がつく程、純粋で正直に反応する西片の少年らしさに見事にフィットしており、声の演技から西片の思春期ならではの恥ずかしさが画面越しにもしっかり伝わってきます。
基本的に「からかい上手の高木さん」は、隣の席に座る女の子・高木さんから毎回のようにからかわれ動揺する西片の姿が描かれている作品です。高木さんのからかいの特徴は、やや異性を意識させるようなものばかりなのが特徴で、恋愛に耐性のない西片は正直過ぎるくらいに照れてしまいます。
そんな照れて声が小さくなってしまう様子が声の演技で丁寧に表現されており、梶裕貴さんの声が持つピュアさが最大限に味わえる1作と言えます。「進撃の巨人」の強烈な怒声を聞いてから、本作のピュアな声を聞くと”本当に同じ人なの?”と言いたくなるくらい演技の幅の広さに驚かされるはずです。
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