若いころにバイクに親しんでいたものの、就職や結婚を機に乗らなくなり、子育てが一段落したなどの理由で再びバイク趣味を始める人のことを、一般的に「リターンライダー」と呼んでいます。
そこで今回は、50代のリターンライダーにおすすめしたいバイク3機種を紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
ある調査によると、バイクの新車を購入している人の平均年齢は54.2歳とのこと。このうち、リターンライダーが何%占めているのかは不明ですが、決して少なくないのは確かでしょう。
50代の方が学生時代にバイクに乗っていたとすれば、ちょうどレーサーレプリカブームのころ。子育てが一段落したことで金銭的にも余裕がありますから、当時の熱狂をほうふつさせるような、1000ccの最新スーパースポーツを買いたくなる気持ちも分かります。
しかし、50代ともなると一般的には体力や視力が低下しており、若いころの感覚で操縦するのは非常に危険です。実際、過去10年間でバイク事故死傷者数が最も増えたのは50代というデータがあり、その一因としてリターンライダーの増加が挙げられているほどです。
そのため、記念すべきリターンの1台目としては、まず身の丈に合ったバイクに乗ることをおすすめします。慣れてきたらどんどんステップアップし、バイク趣味にどっぷりとハマってください!
リターンライダーにまず伝えたいのは、かつて繁栄を極めた400ccクラスはすでにガラパゴス化し、ラインアップが激減しているということです。ホンダの「CB400SF」やヤマハの「SR400」などはすでになく、海外向けの500ccモデルを排気量ダウンしたり、250ccから排気量を増やしたモデルが販売されているという状況です。
ちなみにスズキは数年前から、400ccクラスに「バーグマン400」というビッグスクーターしかラインアップしていません。
本来であればリターンライダーにこそバランスの良い400ccをおすすめしたかったのですが、それに代わるバイクとして、ヤマハのスポーティーネイキッド「MT-07」を紹介します。
排気量は688ccですが、184kgという車重、そして805mmというシート高は400ccクラス並みで、実際にも車体は軽量かつスリムです。エンジンは270度位相クランクを採用した水冷並列2気筒で、低〜中回転域ではツインらしい鼓動感が、高回転域では力強くスムーズな伸び上がりが楽しめます。
秀逸なのはハンドリングで、ライダーの操縦に対して忠実に旋回し、それが全ての速度域で大きく変わることがありません。ベテランでも楽しめるだけの奥深さを持ち合わせるなど、近年稀に見る傑作です。
大型二輪免許(昔で言うところの限定解除)を持っていることが大前提となりますが、「リターンライダーにおすすめするならどれ?」と聞かれた際、真っ先に思い付いたのがMT-07です。このバイクで操縦の基本や楽しさを思い出してみてください。
「子育て真っ最中だけど、少ないお小遣いをやりくりしてでもバイクに乗りたい!」。そんな人におすすめできるのが、スズキの「ジクサー150」です。
「ジクサー」とは、スズキのスーパースポーツである「GSX-R(ジーエスエックスアール)」の略称「GIXXER」から名付けられたとのこと。インドで生産されており、エンジンは154ccの空冷シングルです。
排気量が125ccを超えているので、日本では高速道路を走ることができます。それでいて、原付二種クラスで最も売れているホンダの「CT125・ハンターカブ」より5万5000円も安いのです。
上位モデルに油冷単気筒エンジンを搭載した「ジクサー250」というモデルがあり、車体の基本設計はこれをベースとしています。直径41mmというこのクラスとしてはかなり太めの正立式フロントフォークに、プリロードが7段階に調整可能なリヤショック、フル液晶のデジタルメーター、LEDのヘッドライト、フロントABS、ラジアルのリヤタイヤなど、車両価格こそ原付二種並みですが、装備に関しては一切の妥協がありません。
そして何よりうれしいのは、搭載されている空冷単気筒エンジンの燃費が非常に良いということ。燃費の目安となるWMTCモード値は50.0km/Lで、オーナーのコメントによると、これを上回ることが珍しくないようです。
ちなみに燃料タンク容量は12Lですから、1回の給油で500kmも走れることに。250cc以下なので車検もありませんし、お財布事情に厳しいライダーにとって、まさに救世主のようなバイクと言えるでしょう。
現在所有している車が外車なので、せっかくならバイクも……。そんな方におすすめしたいのが、BMWの「G310GS」というモデルです。
エンジンは312ccの水冷シングルです。リターンライダーの中には「ビーエムが中免で乗れるバイクをラインアップしているの?」と驚かれた人もいるでしょう。BMWは2016年にG310GSを投入し、若年層の拡大に成功。現在はネイキッドの「G310R」というモデルもラインアップしています。
ブランドとしてはドイツですが、生産はインドで行われています。現在、国内4メーカーをはじめ、欧州メーカー含め小排気量車のほとんどはアジア圏内、中でもインドで生産されている割合が非常に増えています。
ちなみに米国のハーレーダビッドソンも、今年に入って「X350」と「X500」という小排気量車をラインアップに加えましたが、この2機種は中国で作られているのです。
G310GSは、キング・オブ・アドベンチャーこと「R-GSシリーズ」のDNAを感じさせる走りが特徴的です。エンジンは単気筒ながら低回転域から粘り強く、フロント19インチホイールによる大らかなハンドリングは、まさにアドベンチャーモデルのそれです。
サスペンションのストロークは前後とも180mmと長く、フラットなダートであれば臆することなく入っていけます。車両価格はやや高めですが、外車を経験されている人なら納得の範疇(はんちゅう)でしょう。
以上、リターンライダーにおすすめの3機種を紹介しました。さっそくディーラーへ試乗に行かれるのも良いのですが、その前に肩慣らしとして操縦の再確認をしてみてはいかがでしょうか。教習所によってはリターンライダー向けのコースを用意しており、なかなか人気のようです。バイクライフの再開はぜひ安全運転で!
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