ある調査によると、バイクの新車を購入している人の平均年齢は54.2歳とのこと。一口に50代といっても、学生時代から乗り続けている人もいれば、子供の成人を機に再び乗り始めようとしている人、さらには初めて教習所に入校した人などさまざまです。
ここでは、酸いも甘いもかみ分ける50代のベテランライダーに向けて、国産車の中から通好みな現行モデルを3機種紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
「MT」シリーズは、“マスター・オブ・トルク”をコンセプトとするヤマハのスポーティネイキッド。そのフラッグシップモデルにあたるのが、2017年5月に発売された「MT-10」です。スーパースポーツ「YZF-R1」のプラットフォームを使いながら、数多くのパーツを一新したり、形状を変更したりするなどして作り込まれており、2022年には排ガス規制対応に伴いモデルチェンジを実施しました。
MTシリーズは、888cc並列3気筒の「MT-09(114万4000円〜)」、688cc並列2気筒の「MT-07(83万6000円)」が下位モデルとしてラインアップしています。MT-09は乗りこなすことを求められるロデオマスター、MT-07はビギナーからベテランまでおすすめできる秀作といった具合に、このシリーズはモデルごとに性格が異なります。
それらを踏まえた上でMT-10に乗ってみると、あまりにも振る舞いが上品かつジェントルで、間違いなくフラッグシップモデルであることを納得させられます。
エンジンはYZF-R1由来の997cc並列4気筒で、166psもの最高出力を発揮しますが、パルス感を伴う排気音とは裏腹に、回転フィールは極めてスムーズです。強心臓というイメージはどこへやら、スロットル操作に対する応答性は常にクリアで、大きく開ければ官能的なサウンドが耳へ届きます。
また上位仕様のSPは、オーリンズ製の電子制御サスペンションを採用しており、乗り心地はまるで4輪の高級セダンのようです。
まさに通好みな1台であり、周りのライダーから一目置かれること間違いなし。何台も乗り継いできたベテランにこそおすすめしたい傑作です。
スポーツツアラー「NT1100」をベースに、モダンクラシックなカフェレーサー風のスタイリングをまとい、2022年9月に発売されたのが「ホーク11」です。
ホンダのラインアップにホーク(HAWK、タカの意)という名称が初めて登場したのは1977年で、1980年に発売されたスーパーホークというモデルを最後に長らく使われていなかったのですが、平成をまたいで令和にこの名が復活したということで、発表されたときには大きな話題となりました。
ホーク11に搭載されているエンジンは、1082ccの水冷並列2気筒です。270度位相クランクを採用しており、低回転域では力強い蹴り出し感が、中回転域にはフワッと伸び上がる領域があるなど、全域で表情の変化が味わえるエンジンに仕上がっています。
開発スタッフが「賛否両論は想定済み」と告白したように、ロケットカウルを含むホーク11のスタイリングは好みが分かれるかもしれません。しかし、ライダーがまたがったときのシルエットは非常に見栄えが良く、そのかっこよさから人目を引く可能性は十分にあります。走りの楽しさを自己完結できる大人のライダーにこそふさわしい1台です。
最後におすすめするのは、カワサキのネオクラシックモデル「W800」です。前身は1999年に登場した「W650」で、来る2024年はシリーズ誕生25周年となります。
ちなみにW650は、カワサキが1966年から1974年にかけてラインアップしていた「W1」や「W3(650RS)」らをオマージュしたモデルで、気がつけば先祖よりもはるかに長く販売されていることになります。
エンジンは773ccの空冷並列2気筒で、低〜中回転域におけるゆったりとした吹け上がりと雑味のない鼓動感は、大人の色気や艶っぽいなどと表現できるものです。まさにエンジンとの対話が楽しめるフィーリングで、1日中乗り続けても全く飽きることがありません。
昨今、国内外を問わずネオクラシックモデルが人気で、世界中の2輪メーカーがこのジャンルに参入しています。その中でもW800は、外観のビンテージな雰囲気と乗り味が見事なまでに合致しており、ルックスにほれて買った人の期待を裏切りません。レザー、もしくはオイルドコットンのジャケットで乗ってほしい秀作です。
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