「フルカウルスポーツバイク」は、いつの時代も“スピード”の象徴であり、多くのライダーの心をひきつけています。最新の250ccクラスにもそうしたモデルが多数存在し、車検がないことから若年層を中心に人気を集めています。
今回は国内4メーカーの代表的な「250ccフルカウルスポーツバイク」と、その特徴について紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
今回紹介する4台は、いずれも先鋭的なスタイリングなので違いが分かりにくいかもしれません。しかし、車両価格は最も安いもので51万4800円(税込、以下同)、最も高いもので96万2500円と、1.8倍以上の開きがあります。
その最たる理由はエンジン形式で、安いものは単気筒、高いものは並列4気筒を搭載しています。気筒数が増えるほど構成部品が多くなるので、価格も比例して上がります。また、サスペンションやタイヤのグレード、電子部品の機能なども価格に反映されますので、装備が充実したモデルほど高価格になる傾向にあります。
しかし、安いモデルで満足できないかというと、決してそうではないところがバイクの面白いところです。装備がシンプルであれば車重が軽くなり、その分だけ日常的な扱いが楽になります。予算や使い方に応じていろいろと選べるのが、このジャンルの魅力と言えるでしょう。
メーカー間の250ccフルカウルスポーツの戦いは、2008年にカワサキから登場した「ニンジャ250R」から始まりました。
ホンダは2011年に水冷単気筒を搭載する「CBR250R」を投入し、価格の安さや燃費の良さで一定以上の成功を収めますが、最高出力は水冷2気筒の「ニンジャ250R」に負けていたので、モアパワーを望む声が多かったのも事実。そこで2017年に満を持して投入したのが「CBR250RR」です。
新開発の水冷並列2気筒エンジンは38psを発揮し、2020年に41ps、2023年に42psへと段階的に引き上げられました。加えて、250ccクラス初となるスロットル・バイ・ワイヤシステムの採用や、クラッチレバーの操作が不要となるクイックシフターのオプション設定など、大排気量スーパースポーツ並みの装備が惜しみなく盛り込まれています。
JP250など市販車をベースとした国内レースで大活躍する一方、前傾姿勢がきついので長時間の街乗りはつらいことも。とはいえ、切れ味鋭いハンドリングは唯一無二。純粋にマシンとの対話を楽しみたい方におすすめです。
2008年にカワサキの「ニンジャ250R」が、2011年にホンダの「CBR250R」が登場しました。この状況を長らく静観していたヤマハは、2014年12月に「YZF-R25」というグローバルモデルを発売します。
新開発の水冷並列2気筒エンジンは、この当時最高の36ps。その一方で、デイリーユースでの扱いやすさも実現していたことから大人気となりました。2019年に大がかりなマイナーチェンジを実施し、モトGPマシン「YZR-M1」をほうふつとさせるスタイリングに進化。同時にLEDヘッドライトや高性能な倒立式フロントフォーク、フル液晶のメーターなどを採用しました。
オプション設定のクイックシフターは、ホンダの「CBR250RR」用のそれとは異なりシフトアップのみに対応したものですが、それでもメリットは十分以上。スポーツ走行だけでなく、普段の街乗りからツーリングまで幅広く楽しめるのが「YZF-R25」の特徴と言えるでしょう。
水冷でも空冷でもなく、積極的にエンジンオイルを冷却に使う、スズキ独自の油冷単気筒エンジンを搭載するのが「ジクサーSF250」です。
スズキは2017年に「GSX250R」という水冷2気筒のフルカウルスポーツを発売。これは現在もラインアップに残っていますが、実は単気筒の「ジクサーSF250」の方が最高出力で2ps上回るのです。しかも車重は「GSX250R」より23kgも軽いので、どちらがスポーティーかは言わずもがなでしょう。
単気筒エンジンは、燃焼1発ごとの蹴り出しが強いので、低回転域から力強く加速してくれるというメリットがあります。加えて車重が軽いこともあり、ストップ&ゴーの多い街中では、今回紹介している4車の中で最も楽に走れるといっても過言ではありません。
ライダーエイドな電子デバイスはせいぜいABSぐらいですが、「YZF-R25」よりもグレードの高いラジアルタイヤを装着している点は見逃せません。車両価格が安い上に燃費も頭一つ抜きん出ており、お財布に優しいフルカウルスポーツと言えるでしょう。
「ニンジャ250R」で250ccフルカウルスポーツのブームを作ったカワサキが、次なる一手として2020年9月に発売したのが、水冷並列4気筒エンジンを搭載する「ニンジャZX-25R」です。
250ccクラスに4気筒モデルが登場するのは13年ぶりで、しかも当時より排出ガス規制が厳しくなったにもかかわらず、最高出力は45ps(2023年モデルは48ps)を公称したことから、二輪業界は大いに賑わいました。
パワーモードの切り替え機能やトラクションコントロール、双方向対応のクイックシフターを標準装備。さらに、高性能な調整式サスペンション、サーキット走行にも対応できるコントローラブルなブレーキセット、そしてスマートフォンとの連携機能を持つメーターパネルなど、装備の豪華さでは間違いなく250ccクラスでナンバー1です。
ゆえに、諸経費を含む乗り出し価格は優に100万円を超えますが、それが高くないと思えるほどの作り込みと高品質な走りに大満足することでしょう。
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