ソフトウェア開発に「スピード」と「変化への対応」が重視されるようになっ た近年、従来のウォーターフォール・モデルに変わるものとして、「Rational Unified Process(RUP)」や「eXtreme Programming(XP)」などの反復型開発プロセスが話題となっている。最近ではXPに加えて「SCRUM」「Adaptive Software Development(ASD)」といった“アジャイル(Agile)”な開発スタイルのアライアンスが結ばれるなど、開発プロセスをめぐる動きはますます活性化しているように見える。ではこれら新しいプロセスは、現実の開発プロジェクトにどの程度採用されているのだろうか? Development Styleコーナーが実施した第3回読者調査から、その状況と課題をレポートしよう。
読者が現在関わる案件で採用している開発プロセスを聞いた結果が図1だ。ご覧の通りトップとなったのは「ウォーターフォール・モデル」であり、以下「スパイラル/プロトタイピング」「反復型開発」と歴史の順に続いている。ちょうど1年前に実施したJava Solutionフォーラム読者調査でも、ウォーターフォールの採用率は43%であり、1年経っても大きな変動は見られなかった。ではウォーターフォール主体の現在の開発プロセスに、エンジニアは満足しているのだろうか?
読者が開発プロジェクトを進める際、問題を感じている点を聞いたところ、「短納期開発への適応」「要求変化(仕様変更)への柔軟な対応」「適正な見積と予算管理」といった、“現代ソフトウェア開発の課題”が顕在化していることが分かった(図2)。またこの結果を図1の開発プロセス別で見ると、現在ウォーターフォール・モデルを採用している読者ほど、納期や見積りへの問題意識が高い傾向にあった。多くのエンジニアは、“現状の方法論では開発環境の変化に適合できないが、なかなか新たなプロセスに移行できない”ジレンマを抱えているようだ。
<<読者のコメントより>>
続いて、スピードと変化の時代に対応すべく誕生した反復型各プロセスの実施状況/実施意向を見てみよう。まず現状では、「自社開発」以外のどのプロセスにおいても、その実施率は1割に満たなかった(図3 青棒)。一方、今後の実施意向を見ると、RUPおよびXPを学びたい/実施したいと考えている読者は、それぞれ回答者全体の6割前後に達している(図3 黄棒)。現在の課題に対応して開発プロセスを変えていくためには、この“ニーズと実態のギャップ”を埋める取り組みが重要と思われる。
膠着した現状を打破し、反復型プロセスを導入/浸透させるためには、今後どのような取り組みが必要なのだろうか? 読者自身のプロジェクトにあてはめて聞いたところ、全体の7割が挙げたのは「プロジェクトチーム全員が学習する機会の創出」だった(図4)。ほかに「プロジェクト・マネージャーやリーダーが学び、伝播する」「経営者/管理職への啓蒙」といったトップダウン・アプローチの必要性に対する認識も低くはないが、最終的に開発プロセスを変えられるかどうかは、プロセスを実行するメンバー個々の意志とスキルにかかっていることに間違いはない。環境変化に応じて開発プロセスを変えていくためには、関係者全体のボトムアップを促すような、新しい学習方法の確立が求められるだろう。
<<読者のコメントより>>
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