明らかになる専務の陰謀、そして救世主現る目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(11)(3/4 ページ)

» 2007年09月25日 12時00分 公開
[森下裕史(シスアド達人倶楽部),@IT]

追い詰められる犯人

八島 「えぇ?! そんなばかな!」

坂口 「どうしたんです。何が分かったんですか?」

 八島はいいにくそうな顔をしてあたりを見回したが、3人以外はバタバタしているのを確認すると小さな声でいった。

八島 「メールを送信した端末の設置個所が分かりました。IT企画推進室です!」

坂口 「えっ、まさか!?」

八島 「間違いありません。その2日間に受注情報データベースにアクセスをした人間は、複数いますが、結果をテキスト保存したのは1人しかいなかったんです。名間瀬室長の端末です!」

豊若 「分かりました。ありがとうございます。坂口、IT企画推進室に行くぞ!」

坂口 「は、はい!」

八島 「私も同行します!」

 衝撃の展開に坂口は頭がどうかなりそうだった。名間瀬室長がなぜ、こんなことをしたのだろうか。坂口は混乱しながらも先頭で推進室に入った。部屋には伊東だけが1人で書類と奮闘していた。

伊東 「坂口さん、どうしたんですか!? 顔色が悪いですよ」

坂口 「伊東、室長はどこにいったんだ」

伊東 「さあ、僕が戻ってきたときにはいませんでしたから。多分、喫煙コーナーだと思いますよ」

坂口 「悪いが呼んできてくれるか」

伊東 「はっ、はい、分かりました。すぐに行ってきます」

 3人からただならぬ雰囲気を感じた伊東は、飛ぶように部屋を出て行った。その会話の間にも、八島と豊若が名間瀬のPCを調べていた。

八島 「これは見たことないソフトだな。社内の標準ソフトにはない」

豊若 「プロジェクト管理ソフトですか。怪しいな……。この社名は聞いたことあるがつづりが微妙に違う」

坂口 「どういうことですか?」

豊若 「スパイウェアの可能性があるということだ。フィッシングサイトって聞いたことがあるだろう?」

坂口 「はい、有名サイトの1文字違いや、似たような語感の偽サイトで、本サイトのIDやパスワードを盗むものですね」

豊若 「そのとおり。今回の手口も同じものだろう。このソフトウェア会社の名前の付け方からして可能性が高い。う?ん、内容は日本語化しているが、海外で配布されているオープンソースソフトにそっくりだな。オープンソースソフトはソースコードが公開されているからそれを利用したんだろう。まだ、このソフトの日本語版は出ていなかったはずだ」

坂口 「オープンソースソフトですか……」

豊若 「サーバソフトもオープンソースソフトが主流だし、クライアントソフトもかなり出ている。私もIT資産の経費削減の1つの選択肢として、情報収集をしているからある程度は分かる」

坂口 「は、はぁ……。そうですか」

豊若 「まぁ、その話は後だ。八島主任。受注情報サーバにアクセスできる人で、ほかにおかしな送信をしていることがないか引き続き調べてください。どうやらこのソフトがインストールされたのは1週間前らしい。ここ1週間分のログに、範囲を拡大して調べていただければよさそうですね」

八島 「分かりました。受注情報サーバにアクセスできる人間だけなら、かなり絞れます。すぐに探します」

 八島はそういうと部屋を出て、情報システム部に戻っていった。

 そして、入れ替わりに名間瀬が戻ってきた。名間瀬は見慣れない人間がいるのを見て、すかさず名刺を差し出した。ただ者でないことが一目で分かったのだ。

名間瀬 「初めまして、サンドラフトの名間瀬です」

豊若 「マキシムアンドコンサルティングの豊若です。西田副社長の依頼で、今回の対応を依頼されたものです。早速ですが名間瀬室長、このプロジェクト管理ソフトはどちらから入手されましたか?」

名間瀬 「あぁ、それは先週特別無料枠でダウンロードしたんです。ちょっと待ってください。確かアドレスは……」

 名間瀬は、キーボードからWebブラウザにアドレスを打ち込んだ。しばらくするとあるWebサイトが表示されたが、名間瀬はけげんな顔をした。

名間瀬 「あれ、ない……。おかしいな。確かにここだったはずなんだけど。画面も全然違うな」

 名間瀬が打ち込んだアドレスは、実際にある有名なWebサイトだったのだが、そこには特別無料枠の文字どころか新製品の紹介すらなかった。

名間瀬 「おかしいな。確かこのアドレスだったと思ったんですが……」

豊若 「失礼ですが、あなたはフィッシングサイトからスパイウェアをダウンロードしてしまったようですね」

名間瀬 「えぇー!? どういうことですか!?」

豊若 「お客さまにメールを送信した記録と、受注管理サーバのログからこの端末が判明したんです」

名間瀬 「そんな……。ウイルス対策ソフトもスパイウェア対策ソフトも最新にしているのに……。どうしてなんですか?」

豊若 「どうやら、狙い撃ちにされた可能性があります。最近は特定の人物に的を絞ったスパイウェアがあり、こういった個人を狙い撃ちにするスパイウェアはウイルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフトでは検知しにくいのです」

名間瀬 「私がなぜ狙い撃ちにされるんですか……。あっ! すいません。ちょっと確認したいことがあるので……。すぐ戻ります」

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