日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 大歳卓麻氏にとって、社長就任時からのほぼ10年は「変化のスピードがますます加速した」ことを実感した年月だった。1990年代後半、e-Businessを唱え、ビジネスポートフォリオの見直しを行っていた同社だが、インターネットバブルの崩壊が同社に事業戦略の方向性を再確認させる契機となった。変化の速い市場環境に対応するために、顧客企業の実業のイノベーションを手助けする――。それこそがIBMの事業の根幹にあると大歳氏は話す。
日本アイ・ビー・エムの企業としての強さを骨太にしていくうえで、基盤となるのはテクノロジだ。世界中の拠点で開発、蓄積されたテクノロジを日本の顧客に提供する体制を構築すること。そのために、同社では経営モデルの変革を推進している。キーワードはグローバル。テクニカル・リーダーシップ・オフィスの設立や、グローバル・デリバリーの拡大、デリバリー・フレームワークの展開、日本のプロジェクト管理手法のグローバル展開などが具体的な施策である。
人材育成面でも、日本以外の拠点で通用するスタッフの養成に力を入れている。同社には、語学やプレゼンテーションスキルを向上させるグローバル人材プログラムがあるが、一昨年の受講者500人に対し、昨年は2500人に拡大した。
2008年度の経営方針として大歳氏が掲げるのは3つ。顧客のイノベーションの実現支援、オープン・テクノロジと高付加価値ソリューションの提供、グローバルに統合された企業への進化である。
顧客のイノベーション実現を促進する施策として、特に挙げられるのは、顧客企業担当制の強化だ。営業部門とは別に、顧客企業のさまざまな部門に目を配る担当者を置き、効果的な提案を行う体制を作る。
テクノロジ領域では、情報システムの空調効率を上げる技術開発に力を入れる。いわゆるグリーンITというのは、空調における電力効率の問題であると大歳氏は言う。米IBMは2007年5月、エネルギー効率の技術的な改善を目指して、年間10億ドルの投資を行っていくと発表した。この計画は「Project Big Green」と命名されている。
グローバルに統合された企業を目指し、大歳氏がトップとなって社内にダイバーシティ委員会を設置、性別・国籍・年齢・学歴や職歴の壁を超えた新しい働き方の定着を推進してく。
なお、次期社長の資質を問われた大歳氏は「何よりも実行力。そして、グローバルなコミュニケーション能力。必ずしも日本人である必要はない」とした。
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