[デル]先進ベンダ買収は「ITのシンプル化」の象徴ストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(14)(1/2 ページ)

デルは自社ストレージ製品のiSCSI対応を推進する一方、iSCSIに特化したユニークなストレージベンダであるイコールロジックを買収した。デルはこの買収によって獲得した製品を、自社のストレージ戦略のなかでどう位置付けていくのか、Dell|EMCブランドの製品群との関係はどうなっていくのか。

» 2008年02月28日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 デルがiSCSIを中核技術として、ストレージ事業の拡充を進めている。デルは2007年から、全社的に「Simplify IT(ITのシンプル化)」というスローガンを掲げているが、ストレージについては、面倒な設定・運用作業を必要とせず、安価でもあるiSCSIを接続技術として使うことが、このスローガンを現実にするためのカギだという考えだ。

 デルは2007年後半から、ストレージ製品のラインアップ強化を進めており、iSCSI対応製品を急速に増やしてきた。

 2007年9月には、同社が提供しているDAS(サーバ直接接続型)ストレージ「PowerVault MD3000」のiSCSI対応版「MD3000i」を国内で発表。iSCSI対応によって、MD 3000iはサーバと1対1で接続するだけでなく、複数のサーバと接続できるネットワーク・ストレージとして機能できるようになった。

 また、2007年12月には、それまで「PowerEdge Storage Server」あるいは「PowerEdge NAS」と呼ばれていたNAS(Network Attached Storage)製品シリーズを「PowerVault NF」に改称するとともに、最下位製品を除く2製品でiSCSI接続を実現した。PowerVault NFシリーズは、デルのサーバ機にマイクロソフトの「Windows Storage Server」を搭載してファイルサーバとして売ってきた製品であるため、それまでサーバシリーズ名を冠していたが、ストレージとしての性格を強めるため、シリーズ名の変更となった。iSCSI対応によって、PowerVault NFシリーズは複数のPCやサーバがファイルレベルでデータを共有するだけでなく、ブロックデータレベルで複数のサーバからアクセスできるようになった。

 この時点でiSCSIストレージとしての位置付けは、PowerVault NFが入門機、そして「PowerVault MD3000i」と、既存のWindows Storage Server搭載ミッドレンジ製品「PowerVault NX1950 Storage Server」の2製品がより本格的なiSCSI利用向けということになった。

iSCSI対応の自社製品同士が競合する?

 ただし、デルのほかの動きが、話が少々複雑にしている。

 デルはEMCとの協業で「Dell|EMC」ブランドのストレージ製品群を展開、EMCにとっては数量的に最も大きな同社製品の販売先となっている。そのEMCは1月初め、NECと共同開発したエントリストレージ製品「CLARiX AX4-5」を発表した。そしてデルも、この製品を「Dell AX4-5」として販売開始した。接続技術としてはファイバチャネルとiSCSIに対応。価格も最小構成の場合保守料込みで100万円程度であり、PowerVault MD3000iとさほど変わらない。

 一方、米デルは2007年11月5日、iSCSIストレージベンダのイコールロジック買収を発表し、1月28日に買収プロセスを完了した。イコールロジックは本シリーズでも取り上げたユニークなストレージベンダ。ファイバチャネルという選択肢をあえて提供せずにiSCSIに特化、さらにストレージ仮想化を生かして運用管理の大幅な簡素化を図ったミッドレンジ・ストレージ「PSシリーズ」を提供してきた。製品価格は約700万円以上で、デルのほかのiSCSI対応ストレージ製品と比較すると文字通りけた違いだが、導入や容量拡張などの作業が短時間で済み、専門家も必要としないことから、採用企業が増えている。

 そこで生まれる疑問は、まず「MD 3000i」と「Dell AX4-5」をどう売り分けていくのかという点、そしてPSシリーズを、デルは自社のストレージ戦略のなかでどう位置付けていくのか、Dell|EMCブランドの製品群との関係はどうなっていくのかという点だ。

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