グリーンITは、環境ではなく損得の問題日本オラクル、「Oracle Green IT Forum 2008」を開催

» 2008年08月06日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本オラクルは8月6日、「Oracle Green IT Forum 2008」を開催した。テックバイザージェイピーの栗原潔氏をはじめ、日本オラクルの常務執行役員 製品戦略統括本部長の三澤智光氏らが、グリーンIT戦略実現に向けたさまざまなアプローチについて解説した。

 栗原氏は「IT基盤効率化によるグリーンIT戦略」と題して講演。CO2排出量削減など環境問題への対応、電力コスト削減などの経済的問題、データセンターの電力消費量削減という3つのポイントを挙げ、「グリーンITに取り組むべき必然性が確実に高まっている」と改めて指摘した。

 グリーンIT戦略のとらえ方は、「エコだけではない」ことも強調した。「例えば、電気代をIT部門の予算として計上していないためか、IT部門が電気代に無頓着な例が多い。しかし、ITの消費電力削減は確実にコスト削減、社の利益向上につながる。グリーンITを環境問題ではなく、損得の問題としてとらえれば、戦略を推進するうえで、IT部門をはじめ、社内でのコンセンサスがいっそうとりやすくなるはずだ」

写真 テックバイザージェイピー 栗原潔氏

 消費電力削減に有効なテクノロジーとして、プロセッサのリーク電流削減、電圧・クロックの動的制御や、ブレードサーバ、シン・クライアントなどを紹介。ストレージ分野においては、データにアクセスされた時点で初めて電源が入るMAID(Massive Array of Inactive Disks)のほか、SSD(Solid State Disks)などを紹介した。

 また、グリーンIT戦略を実施する際のポイントとして、「個々のハードウェアの電力消費削減より、ハードウェア資源の利用効率向上を図ることが重要」と指摘。「利用率が低いハードウェアが乱立する状況は、ハードウェア、電力ともに無駄遣いだ」として、ハードウェアを集約する重要性を説いた。

 特に、各部門単位など縦割り型のシステムでは、アプリケーション間でハードウェア資源を有効活用しにくいほか、管理の複雑化や電力消費量の増大を招く。しかし仮想化技術を活用して、サーバ、ストレージなどのハードウェアを集約すれば、アプリケーション間でハードウェア資源を有効活用できるほか、管理コスト、電力コストとも大幅に低減できる。

 「例えば小型サーバ360台を、1台の大型サーバに集約することも可能。小型サーバが1台当たり消費電力300wだとすれば、消費電力2万wの大型サーバに集約すれば、電力消費量は5分の1に抑えられる」

 ただ、こうした方法論は理解していても、その取り組みにはネガティブな見方をする向きも多い。栗原氏はこの点にも触れ、「グリーンIT戦略について、『余計な仕事が増えた』『ITの電力だけ削減しても仕方ない』といった意見もあるが、システムの効率化やコスト削減は、グリーンITとは関係なく、いずれは取り組まなければならなかった課題。それならポジティブな見方をするべきだ」と強調した。

 

写真 「グリーンITはコスト削減、効率化の問題。環境問題と関係なく、いずれは取り組まなければならなかったこと」(栗原氏)

 「内部統制対応や2000年問題のときも似たような状況だった。しかし、そうした問題が認知されていたおかげで、社内予算をきちんと確保してもらったうえでレガシーシステムの棚卸しに取り組めた、とみることもできる。今回も『グリーンIT』という言葉を“方便”として使えば、効率化をスムーズに進めるための予算や体制を確保しやすくなるはずだ」

 このほか、グリーンITにまつわるネガティブな意見として、「単なるブームに過ぎない」「地球環境問題より、差し迫ったビジネス上の問題がたくさんある」「温暖化問題は一部の利権団体の策略ではないのか」といったものを紹介。

 その1つ1つに対して、「グリーンITをコスト削減の取り組みとみれば、ブームに関係なく、いずれは取り組まねばならなかったビジネス上の課題だ。仮に温暖化問題が何らかの策略だったとしても、自社がコスト削減を図らなくともよい理由にはならない」と、明快に誤解を解いてみせた。

 最後に、栗原氏は「グリーンITの本質とは、環境のためにITの効率性を犠牲にすることではなく、IT基盤の効率化によって、結果的に環境に貢献すること」と解説し、改めて積極的な取り組みを促した。

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