ハイ・パフォーマーの“知”は、移転・共有できるか?:有能プロジェクトマネージャ育成術(1)(3/3 ページ)
世の中に多くの失敗・赤字プロジェクトが存在する一方、どんな難解なプロジェクトでも成功裏に終えるプロジェクトマネージャ(PM)がいる。こうした知恵や能力を移転・共有することはできないのだろうか?
有能PMへの面談結果
まずは、社内有能PMのPMノウハウを抽出し、それを組織的に共有する方法の考案と合意形成までを支援することとなった。第1段階は、指折りレベルの有能PMのPMノウハウをえぐり出し、その結果の可能性を検討するところまでである。
まず第1 SI事業部の有能PMであるF氏にインタビューを行った結果、そのPMノウハウが次のようなものであることが明らかになった。
F氏に高い成果を出し続ける秘けつを聞いたところ、彼は「お客さまが放棄していることもやる」のだと発言した。彼は常日ごろ周囲にもそのようにすべきだといい続けているそうである。そうすれば必ずお客さまの信頼を勝ち得ることができるため、後は思うようになるというのである。
とはいえやみくもにお客さまの放棄したことを拾っていってもうまく行かないため、さらに具体的な行動レベルの事例をインタビューし、PMノウハウをえぐり出すことに成功した。下記は経営トップへのプレゼンテーション用のフォーマットである。
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第2 SI事業部のG氏からは「協力会社責任者との1対1の対話」というPMノウハウを、アウトソーシング事業部のH氏からは「仮説と事実に基づく検証による障害特定」というPMノウハウをえぐり出すことができた。
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このようなPMノウハウは、E社内では誰も知らなかった。誰もが「彼は特別」と思っており、かつ例えばF氏本人も漠然と「お客さまが放棄していることもやる」べきであるとして、そうした考え方で部下を育成しようとはしていなかったからである。
しかし、これらのPMノウハウは、メソドロジのフレームワークを用いることで、フォーマットやプロセスに落として説明することができるのである。
PMノウハウ移植の検討開始
E社では、経営会議において、数名の指折りレベルのPMから抽出されたPMノウハウについての評価を行った。経営会議では、「PMノウハウそのものにパワーがあること」「体系化できること」の2点から、すべての有能PMからPMノウハウを抽出し、一般PMに移植する検討を開始するように決議された。
プロジェクトの体制は、事務局を本社プロジェクト管理部に設置し、有能PMの人選や抽出されたPMノウハウの評価などを各事業部長が担当することとした。
プロジェクトの目的は、短期にPMノウハウを一般PMに移植し、赤字プロジェクトを撲滅することである。
次回は、有能PMから抽出されたPMノウハウの結果について見ていこう。
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著者紹介
▼大上 建(だいじょう たける)
株式会社プライド 取締役 チーフ・システム・コンサルタント
前職で上流工程を担当する中、顧客の利用部門は必ずしも「開発すること」を望んでおらず、それを前提としないスタンスの方が良いコミュニケーションを得られることに気付き、「情報の経営への最適化」を模索することのできる場を求めてプライドに入社。株式会社プライドは、1975年に米国より社名と同名のシステム開発方法論の日本企業への導入を開始して以来、これまで140社余りの企業への導入支援を通じて、情報システム部門の独立自尊の努力を間近に見てきた。
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