組織的、総合的に“できるPM”を育成する方法有能プロジェクトマネージャ育成術(5)(1/3 ページ)

前回までは有能プロジェクトマネージャ(PM)が持っているPMノウハウを抽出し、メソドロジ化する流れを、E社のプロジェクトHKのストーリーを通じて説明してきた。今回はこのPMノウハウのメソドロジをどのように一般PMに展開するかを追っていく

» 2004年12月18日 12時00分 公開
[大上建(株式会社プライド),ITmedia]

ノウハウ継承に関する重大な問題

 E社の有能PMたちは、同社が創業してから数年の間に入社した人たちで、草創期を支えてきた。彼らは創業時代からの大口顧客のコンピュータメーカーの仕事で、同じ釜の飯を食ってきた仲である。当時のコンピュータメーカーのPMは、自社社員か協力会社社員かの分け隔てをすることなく、仕事を成し遂げるための戦力育成に心血を注いでいた。有能PMたちはこのような環境で育成されてきたのである。

 その後、コンピュータメーカーは商社化の方向性を鮮明にし、開発は協力会社に分業するようになり、E社は時を同じくして、ほかの市場への展開を行ってきた。

 有能なPMであった多くの人たちはすでにE社の管理職になっている。さらに現在の有能PMたちも優秀な実績を持っているため、そのほとんどが今後3年の間に管理職に昇格することは間違いないと考えられる。

 そうした中、草創期に鍛えられた人たち以外の有能PMが現れていないことに、E社の経営陣はあらためて気が付き、危機感を強めていた。有能PMが同じ現場にいても後進のPM育成が困難なのに、管理職の立場からの育成はさらに困難であることが明白だからである。そこでE社の経営陣はプロジェクトHKに対して、本気でPMを育成する方策を練るよう指示を下した。

ALT 図1 有能PMは現場を離れ管理職になってしまう

目指すビジョンとシナリオ

 経営者からの、本気でPMを育成する方策を練る指示に対して、プロジェクトHKが描いた目指すビジョンが図2である。

 プロジェクトHKでは、PMノウハウをメソドロジの形にした教育の可能性について、仮説が検証された。このPMノウハウのメソドロジ化を含めて総合的な育成策を打つのである。

 そこでまずは有能PMの持っていたPMノウハウの存在とパワー、およびその拡充方法を全PMで共有・合意する会議を行い、気付きを得た人たちの自律的なPMノウハウの創造と活用をスタートとすることにした。

ALT 図2 PMノウハウの組織的共有のビジョン
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