Google Cloudは自社サービスのフルマネージドMCPサーバを公開した。AIと外部ツールの標準連携を実現し、Google Cloud全体でエージェント型AI開発を促進させる。
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Google Cloudは2025年12月11日(現地時間)、「Google Cloud」各種サービスのフルマネージドMCP(Model Context Protocol)サーバを公開した。今後、段階的に全てのサービスにおいてMCPをサポートする予定だ。Google Cloudは、AIがユーザーの目的を達成するためには、高性能なAIモデルだけではなくツールやデータと確実に連携できる仕組みが重要との立場を示している。MCPはAIモデルと外部ツール・データを接続する標準として広がりつつある。
従来、Google CloudのMCPサーバを利用するには、サードパーティの開発者が構築したサーバを入手・管理する必要があった。今回の対応により、開発者はグローバルで一貫したエンドポイントに接続するだけでGoogleとGoogle CloudのサービスのMCPサーバを利用できるようになる。
Googleは「Apigee」を通じ、企業が自社の業務ロジックやデータフローに基づいて整備した独自APIや外部APIをMCPツールとして公開し、統制できる設計も採用した。企業は社内外のAPIをエージェントのためのツールとして一覧可能な形で整備できる。
今回の取り組みの第1弾として、以下のサービスがMCP対応を開始した。
「Google Maps Platform」が提供する地理空間データをエージェントが直接参照できる。場所情報、天気予報、ルーティング(現地時間)などの最新データに基づいた応答が可能になり、ハルシネーションを抑制できる。旅行関連の質問や周辺施設の照会など、現実の地理データを必要とする問い合わせに対応できる。
「BigQuery」のMCPサーバは、エージェントがデータのスキーマを理解しSQL文を実行できる仕組みを提供する。データを別環境に移動する必要がない点がメリットだ。BigQueryの予測機能にもアクセスできる。
「Google Compute Engine」(GCE)のリソース作成やサイズ変更などの操作をツールとして公開することで、エージェントが自律的にインフラを管理できる環境を整備した。負荷に応じたリソース調整など、継続的な運用まで含めて扱える。
「Google Kubernetes Engine」(GKE)のMCPサーバを利用すれば、GKEと「Kubernetes API」に対し構造化された操作が可能だ。CLI出力の解析や複雑なコマンドを組み立てる必要がなくなり、エージェントは問題診断や修復、コスト最適化などの作業を実施できる。
「Cloud API Registry」と「Apigee API Hub」により、Google提供のMCPツールと企業が整備したツールを一覧化できる。「Google Cloud IAM」によるアクセス制御、監査ログによる記録、「Google Cloud Model Armor」による高度な攻撃への対策が組み合わされ、運用面の統制も含んだ構成となっている。
Anthropicのデビッド・ソリア・パラ氏は、Googleの広範な製品でのMCP対応がエージェント型AIアプリケーションの開発を促進すると述べている。
活用例として、小売店舗の立地候補を調査するエージェントの想定が紹介されている。「Gemini 3 Pro」を利用する自然言語エージェントがBigQueryで売り上げデータに基づいて収益を予測し、Google Mapsで周辺の店舗状況や配送ルートを確認する。これらは標準化されたMCPサーバを介して実行される。
今後数か月以内に、「Cloud Run」や「Cloud Storage」「Spanner」「Looker」「Cloud Monitoring」など、多数のサービスでMCP対応を順次進める計画が示されている。GoogleはAgentic AI Foundationの創設メンバーとして、MCP仕様の進化にも引き続き関与する姿勢を示す。
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