Gartnerは、日本の未来志向型インフラ・テクノロジーに関するハイプ・サイクルを発表した。AIエージェントや完全自動化など9項目を新たに加え、2030年を目標とした産業変革の指針を提示している。
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ガートナージャパン(以下、Gartner)は2025年10月1日、日本における未来志向型インフラ・テクノロジーのハイプ・サイクルを発表した。今後企業にとって不可欠になる未来志向型テクノロジーや注目のトレンドとして35のキーワードを取り上げ、その内9項目を新たに追加した。追加されたのは、AIエージェントやエージェント型AI、AI定義型自動車、AIファクトリー、AI創薬プラットフォーム、インダストリーAI、完全自動化、ビジネス指向EA、デジタル・デリバリーの民主化となっている。
Gartnerのハイプ・サイクルは、テクノロジーの成熟度や普及度を時間軸上で示すだけでなく、ビジネス課題や新しい機会との関連性を視覚的に整理する手法。企業はこれを参照することで、事業目標に沿った導入判断の指針を得られる。
2030年までに社会や産業の構造はテクノロジーの影響により大きな変容を迎えると想定される。こうした変化は企業活動の在り方を根本から揺さぶる可能性を含んでいる。
バイスプレジデントアナリストの鈴木雅喜氏は、今回の発表に際して以下のように述べた。
「AIエージェントは2025年現在、『過度な期待』のピーク期にあり、既に曲線の先に進みつつある。AIの活用領域は業種や用途を問わず広がっている」
2025年版で新たに追加されているテクノロジーの内、エージェント型AI、AI創薬プラットフォーム、AI定義型自動車は黎明期に位置付けられている。これらは今後革新的な影響を持つと見られており、既にピーク期にあるAIエージェントや生成AIと同様、2〜5年の範囲で成熟段階に到達すると予測されている。
エージェント型AIはAIエージェントのより包括的、進化的な概念とされ、自律的に状況を把握し最適な行動を実行できる点が特徴だ。従来のシステムが指示を待つ構造に依存していたのに対し、エージェント型AIは業務のスピードと質を高める可能性を持つ。常時稼働し続け、意思決定の自動化やリスク低減、イノベーションの促進につながると予想される。
AI創薬プラットフォームは、新薬開発の候補探索や設計、最適化、評価をAIで支援する統合システムを指す。従来10年以上かかっていた新薬開発の期間を短縮し、コスト削減も実現できる可能性がある。医薬品研究を効率化する基盤的技術としての役割が期待されている。
AI定義型自動車は、走行制御や環境認識、意思決定、学習機能、ユーザー体験の最適化をAIが担う自動車を指す。従来の開発手法を刷新し、効率と機動性を高めることが可能になる。自動車産業における新たな競争の焦点となると考えられている。
ハイプ・サイクルでは完全自動化の概念も示されている。人間の介在を必要とせず、システムがエンド・ツー・エンドで自律的にタスクを遂行する状態を意味する。意思決定、適応、例外処理に至るまで自律的に対応できる能力を備えた完全自動化は、新たな産業革命の原動力となるが、雇用や社会構造に深刻な課題を引き起こすリスクも孕む。
ディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストの亦賀忠明氏は、「これらのテクノロジーは産業革命級のものであり、企業は早急に大戦略タスクフォースを設ける必要がある」と指摘した。その上で、完全自動化がビジネスモデル、組織、人材に及ぼす影響を深く理解し、企業を「デジタルを活用する存在」から「デジタルを前提とした存在」に再定義することが求められると述べている。
また同氏は完全自動化の実現には卓越したリーダーシップとエンジニアの存在が欠かせないと強調した。企業はそのような人材が継続的に成果を出せる環境を整える必要があるとし、2030年には個人もまた「望む社会像」や「その中での生き方」という根源的な問いに向き合うことが不可避になると指摘した。
今回のハイプ・サイクルは、日本における未来志向型テクノロジーの広がりを体系的に示したものであり、企業や個人に長期的な変革の方向性を考える材料を提供する内容となっている。
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