OpenAIは、エージェントの設計、展開、評価を統合する開発環境「AgentKit」を発表した。従来の複雑な工程を簡略化し、迅速な開発と改善を実現する。「Agent Builder」「Connector Registry」「ChatKit」という新機能により、企業の業務効率向上が期待されている。
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OpenAIは2025年10月6日(現地時間)、開発者向けの新たなツール群「AgentKit」を発表した。AgentKitはエージェントの構築、展開、最適化を一貫して実行するための包括的な開発環境であり、これまで分断されていたワークフローや評価手順を統合することを目的としている。
従来、エージェントの開発には複数のツールを組み合わせる必要があり、バージョン管理のない複雑なオーケストレーションやカスタムコネクターの実装、手作業による評価パイプライン構築、プロンプト調整、ユーザーインタフェース開発など、多くの工程が発生していた。AgentKitはこれらの課題を解消し、視覚的な設計と迅速な統合を可能にする新たな基盤として位置付けられている。
AgentKitの主な構成要素は次の通り。
米国の金融テクノロジー企業Ramp Businessは、Agent Builderを利用して数カ月単位の工程を数時間に短縮したという。法務や開発など複数部門が同一画面で作業できるため、開発サイクルの効率化に寄与したとしている。LINEヤフーもこのツールを活用し、2時間以内で業務支援エージェントを構築したと発表した。Canvaの開発者コミュニティにおいても、ChatKitを利用することでサポートエージェントの構築期間を2週間以上短縮し、1時間以内で導入を完了したという。
エージェント性能の評価についても新機能が追加されている。「Evals」プラットフォームには、データセットの作成機能、トレース評価、プロンプトの自動最適化、他社モデルのサポートが加わった。開発者はエージェント全体の挙動を定量的に把握し、継続的な改善を行える。投資企業のThe Carlyle Groupは、Evalsを利用した評価体制により開発期間を半減させ、精度を3割向上させたと報告している。
推論モデルをカスタマイズする「Reinforcement Fine-Tuning」(RFT)も強化されている。「o4-mini」モデルでは一般提供が開始され、「GPT-5」ではプライベートβとして運用中だ。今回の更新において、ツール呼び出しの最適化を可能にする「Custom tool calls」と、評価基準を柔軟に設定できる「Custom graders」が導入されている。
提供開始時点で、ChatKitおよびEvalsの新機能は全開発者が利用できる。Agent Builderはβ版として公開され、Connector Registryは一部のAPIユーザーおよびChatGPT Enterprise、Edu契約者に順次展開される予定となっている。これらの機能は標準APIモデルの料金体系に含まれる。これらはOpenAIの開発者向けツール群「OpenAI Platform」で利用できる。
OpenAIは、今後ChatGPTでのエージェント展開機能や独立した「Workflows API」の追加を予定している。今回のAgentKit発表は、より体系的かつ安全にAIエージェントシステムを開発するための新たな基盤を提供する取り組みとして注目される。
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