NTTグループは「AIがSI事業にもたらす影響」をどう見ている? 決算会見から探るWeekly Memo

NTTグループが直近の決算会見で、最新のAIの取り組みについて説明した。その中で聞いた「AIがSI(システムインテグレーション)事業にもたらす影響とは」とは――。

» 2026年02月09日 15時20分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 かつてITといえば、その構成要素はハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、サービスだった。それがクラウドの普及に伴い、ハードウェアとネットワークはデータセンターなどの「インフラ」と呼ばれ、ソフトウェアとサービスも「ソフト・サービス」として一括(くく)りになった印象だ。そして今、AIがその両方に組み込まれるとともに、両方を組み合わせたAIの新しい利用形態もどんどん創出されつつある。

 そうしたインフラとソフト・サービスを総合的に提供する立ち位置でAIに注力しているのが、NTTグループだ。同社はAIにどう取り組み、AIが世の中に広く活用される中で、人とAIの関係をどう考えているのか。NTTグループの直近の決算発表会見から探る。

NTTおよびNTTドコモの「AIへの取り組み」

 NTTグループが2026年2月5日、2025年度(2026年3月期)第3四半期(2025年10〜12月)の決算を発表した。その内容は発表資料(注1)をご覧いただくとして、本稿ではその中からAIに関するトピックや質疑応答のやりとりを紹介し、NTTグループのAIに対する姿勢について考察したい。

 まずはNTTグループ各社の顔ぶれを、2025年度の通期業績予想とともに図1に記す。

図1 NTTグループ各社の2025年度の通期業績予想(出典:NTTの決算資料)

 決算発表では、この中からNTTドコモとNTTデータグループがNTTに続いて個別に会見を実施した。

 最初に会見したNTTの島田明氏(代表取締役社長 社長執行役員 CEO)は、「デジタル・フィジカルを連動させたAIの社会実装」について、次のように説明した(図2)。

図2 デジタル・フィジカルを連動させたAIの社会実装(出典:NTTの決算資料)

 「これまでNTTでは純国産LLM(大規模言語モデル)『tsuzumi』の開発、提供に加え、グローバルの主要LLMにも幅広く対応したAI導入支援を推進してきた。この第3四半期までのAIビジネスの受注額はグループ全体で1478億円となり、年間目標の1500億円を上回るペースで推移している。現在、国内外の多様な業界のリーディングカンパニーと連携して、デジタル領域とフィジカル領域を連動させたAIの社会実装に着手しており、今後さらに取り組みを進めたい」

NTTの島田明氏(代表取締役社長 社長執行役員 CEO)(NTTの提供写真)

 また、質疑応答でAIの社会実装における今後の見通しを聞かれた島田氏は、「今、tsuzumiについては国内で2000件ほどの引き合いがあり、分野としては自治体や金融、医療のお客さまが多い。そこから今後の要望として聞いているのは、オープンにできないデータを対象とした『プライベートAI』あるいは『ソブリンAI』への対応だ。従って、オープンなデータを対象としたAI活用も引き続き広がる一方で、個別用途向けのニーズも高まるのではないかと見ている」と答えた。

 次に会見を行ったNTTドコモの前田義晃氏(代表取締役社長)は、CX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)領域の取り組みとして「コンタクトセンターソリューションにおけるAI活用」について、図3を示しながら次のように説明した。

図3 CX領域の取り組み(出典:NTTドコモの決算資料)

 「CX領域のコンタクトセンターでは、人手不足や業務運営の複雑化を背景に、AI活用に対するニーズが高まっている。(グループ会社の)NTTドコモビジネス(旧・NTTコミュニケーションズ)では、AIを組み込んだコンタクトセンターソリューションを提供し、応対技術の向上や応対時間の短縮、アフターコールワークの効率化などを通じて導入企業のコスト削減に貢献している」

NTTドコモの前田義晃氏(代表取締役社長)(NTTドコモの提供写真)

 また、図4を示しながら、「先ほども話があったが、今、注目度が高まっているフィジカルAIについても取り組みを強化している。NTTドコモビジネスではソーシャルロボットや産業用ロボットなどをつなぎ、セキュリティ機能を標準搭載した新たなプラットフォーム『docomo business SIGN』を2025年12月にリリースした。併せてパートナー各社との戦略的な協業も進めている。これらにより、『AI-Centric ICTプラットフォーム』でさまざまなロボットをオーケストレーションできる環境を構築し、人手不足の解消や生産性向上など新たな価値の創出に注力したい」とも述べた。

図4 フィジカルAIの取り組み(出典:NTTドコモの決算資料)

NTTデータグループが語った取り組みとは

 最後に会見したNTTデータグループの佐々木裕氏(代表取締役社長 CEO)は、「Quality Growthを実現するための注力領域」について、図5を示しながら次のように説明した。

図5 Quality Growthを実現するための注力領域(出典:NTTデータグループ)

 「NTTデータグループでは『AI-empowered New Value & Productivity』と『Next-Gen Infrastructure』をキーワードに、インダストリー固有のビジネス課題や規制などに対応したAIエージェントによる新たな価値をプライベートAIやソブリンニーズにも対応したハイブリッドクラウド基盤まで含め、フルスタックで提供している。その提供モデルを迅速かつグローバル規模で進めるためにAI新会社の設立やパートナーとのエコシステム形成を強化している。直近ではAmazon Web Services(AWS)とクラウド移行およびAIエージェント活用の推進に向けたグローバルアライアンスを結んだ。今後もパートナーとのアライアンスを活用しながら、AIや次世代インフラによる価値提供を通じてQuality Growthを実現したい」

NTTデータグループの佐々木裕氏(代表取締役社長 CEO)(NTTデータグループの提供写真)

 また、2025年末にAI新会社「NTT DATA AIVista」を米国シリコンバレーに設立したことについては図6を示しながら、「AI-empowered New Value & Productivityにおいて価値を提供していく上で、カギとなるのはAI技術そのもの以上にお客さま固有のデータや業務、業界の特性に合わせてAIを実装し、ビジネスの成長につなげる“ラストマイル”だ。NTT DATA AIVistaはこのラストマイルの実装力を強化するために設立した。トップに就いたブラティン・サハCEOは、NVIDIAやAWSでAIやML(機械学習)に関する事業の成長をけん引してきた経験があり、テクノロジーとビジネスの両面からグローバルで成長をリードできる人材だと考えている。こうした取り組みによって、2027年度(2028年3月期)の目標に掲げたAIエージェント関連ビジネスの売上高3000億円を達成したい」と述べた。

図6 AI新会社「NTT DATA AIVista」について(出典:NTTデータグループの提供資料)

 佐々木氏は会見の質疑応答で、SI(システムインテグレーション)事業へのAIの影響について問われ、次のように答えた。

 「SIにおけるシステムの開発や運用、さらにBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)も含めて、AIを活用することによって生産性を大きく改善できるようになる。事業形態としては、これまで人によって提供してきたサービスが『人とAIのミックスで提供する形』になるだろう。われわれとしてはその事業形態においても先行して市場をリードしたい。それはすなわち、その事業形態で多くのお客さまの案件を獲得するということだ。そのためには、AIの適用で1案件当たりの売り上げが減っても、その周りにある案件を獲得するような仕事の広げ方が求められる。そこにもAIが活用できるだろう」

 「人とAIのミックスで提供する形」との表現が印象に残った。同氏はSIの事業形態として述べ、すなわち「人が不要になることはない」との意味を込めたものとも推察できるが、筆者は「ミックス」という言葉に着目して「社会や企業の活動、人の仕事や生活に、AIが混ざり合うこと」と解釈した。

 果たして、どう混ぜ合わればいいのか。今回の会見で、そんな疑問も頭に浮かんできた。取りあえず、「ミックス」という言葉を意識しておきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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