「2026年に取りたいIT資格」1位は“あのベンダー資格” 読者調査で読み解くトレンド調査レポート

IT産業の拡大に伴い、資格取得への関心が高まっている。現代のエンジニアやビジネスパーソンが「次に狙うべき」資格は何なのか。読者アンケートの結果から、今選ばれている資格のトレンドと、実務で本当に役立つ資格を明らかにする。

» 2025年12月19日 11時00分 公開
[村田知己ITmedia]

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 総務省統計局の「労働力調査」によると、 情報通信業における2024年の就業者数は292万人となり、同年に最も就業者数が増加した産業となった。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験の2024年度の応募者数は現行制度で初めて70万人を突破し、IT産業の発達とともに、IT資格の取得に挑戦する人が増えていることが分かる。

 先述の情報処理技術者試験をはじめとして、IT業界ではさまざまな資格試験が実施されている。どれが人気で“役に立つ”資格なのか。『ITmedia エンタープライズ』読者に対して実施したアンケート調査(回答期間:2025年11月17日〜12月12日、回答数:289件)の結果を基に解説する。

「2026年に取りたいIT資格」ランキング

 2025年も年の瀬ということで、まずは「2026年に取得したいIT資格」について聞いた結果を見ていこう。

図1 2026年に取得したいIT資格ランキング ※トップ10のみ。複数選択可のため合計値は100%を超える(出典:調査結果を基にAIツールで作成)

 1位は「Amazon Web Services」(AWS)の認定資格各種(18.0%)、2位は「G検定」、3位は「情報処理安全確保支援士」、4位は「Google Cloud」の認定資格各種、5位は「Microsoft Azure」の認定資格各種だった。

 定番のIT資格である「ITパスポート」や「基本情報技術者」「応用情報技術者」などを抑えて、クラウドベンダーの各種認定資格が上位に名を連ねた。また、昨今のAIブームの影響かG検定の取得を目指す人が多いようだ。

 業種別に見ると、IT製品関連業で働く人々はITパスポートや基本情報技術者などの初級者向けの資格よりも、クラウドベンダーの資格や情報処理技術者試験の上位資格を選ぶ人が多い。教育、医療、官公庁などを含む「その他業種」では情報処理安全確保支援士を選ぶ人が多く、公共機関におけるセキュリティ人材の需要増加が垣間見える。一方で、IT製品関連業以外の業種では「あてはまるものはない」(つまり、2026年に取得したいIT資格がない)人が多く(30%以上)、資格取得支援制度など、ユーザー企業側でも学習意欲を高める仕組みを生かせるかどうかが課題になりそうだ。

 従業員規模別に見ると、従業員数100人以下の企業は「あてはまるものはない」を選ぶ人が多く、中小企業のIT活用の未来に懸念が残る。その中でも「情報セキュリティマネジメント」や情報処理安全確保支援士を選ぶ人は比較的多い。昨今のサイバー攻撃の被害事例によって、危機感が共有されている可能性が高い。

保有しているIT資格は「基本情報」が圧倒的1位

 「現在保有しているIT資格」(複数回答可)についても聞いたところ、基本情報技術者が2位以下に大きな差を付けて1位だった(40.8%)。2位は応用情報技術者(24.6%)、3位はITパスポートと情報セキュリティマネジメント(20.8%)、4位は情報処理安全確保支援士(15.6%)、5位はネットワークスペシャリスト(12.8%)だった。

 IPAの情報処理技術者試験はIT関連の数少ない国家試験であり、初級者向けの試験も用意されているため保有者も多い。特にIT製品関連業や情報システム部門で働く人の保有率が高い。

 クラウドベンダー資格の保有率はAWSが10.4%、Microsoft Azureが8.7%、Google Cloudが3.8%だった。Google Cloudの認定資格は現時点では保有率が少ないが、「2026年に取得したいIT資格」としては9.3%の人が投票しておりMicrosoft Azureと並んでいる。クラウドサービスのシェアを見ると、AWSは右肩下がり、Microsoft Azureは波があるのに対して、Google Cloudは安定成長を続けている。シェアの絶対数は競合に及ばないが、今後の期待も含めて資格取得を志す人が増えている可能性はある。

 「あてはまるものはない」(つまり、保有しているIT資格がない)人は全体で23.2%だった。業種別で見るとIT製品以外の製造業で多く(40.6%)、部門別に見ると情報システム部門以外の部門で多い(30〜40%程度)。日本は欧米諸国と比較してIT人材がIT関連企業に偏在する傾向がある。IT関連企業は東京に集中しているため、地方のデジタル化が遅れる原因の一つとなっている可能性がある。システムのエンドユーザーがITの素養を身に付けることで、全社でのデジタル化やセキュリティ強化につながる。IT資格試験の受験者増がIT関連企業やIT部門の外にも広がることを期待したい。

「役に立ったIT資格」1位は応用情報

 併せて、何らかのIT資格を保有している人に対して「業務で最も役に立った資格」(1つのみ選択)を聞いたところ、1位は応用情報技術者だった。特に情報システム部門や課長職・主任相当の人に評価されており、システムの企画や開発、運用において必要な知識を幅広く学べる点が評価されていると思われる。また、情報システム部門ではIPAの「ネットワークスペシャリスト」や情報処理安全確保支援士も評価されており、これらの資格で得た知識が実務に直結していることが見て取れる。 

 一方、「取得したい人」「保有している人」が多かったクラウドベンダーの資格は、「役に立った資格」としては上位に挙がらなかった(AWSは3.2%、Microsoft Azureは2.3%、Google Cloudは1.8%)。1社のサービスに特化した資格ゆえに1位に選ぶ人が少なかったのだと思われる。また、プロジェクトのアサイン要件や転職の要件に記載されているために取得を目指しているなど、取得の動機が実務以外にある人が多い可能性がある。

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