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御社の企画提案がダメな理由プロフェッショナル企画提案方法論−C/P(1)(2/2 ページ)

情報システム部門やシステム・インテグレータには「企画提案」がついて回る。個人の技と思われている企画提案だが、実は組織的方法論が存在する。

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現在のシステム企画やシステム提案のやり方

 「提案が困難になった」「企画がうまくいかない」「承認獲得できない」などの嘆きの声は増えているが、ではどんな企画や提案のやり方をしているのであろうか。システムの企画方法について、何社かのユーザー企業情報システム部門に聞いてみた。

  • システム企画は、予算時期に合わせたお祭り騒ぎのようである。そのときになって考え始め、過ぎれば忘れられる。結果、知識・経験の蓄積は行われない。
  • やり方は担当者任せであり、学習は過去の成果物の模倣にとどまっている。
  • 走りながら考え、納期に合わせて成果物を上げるため、根本に問題があってもレビューできない。
  • 社内の業務問題の構造的解釈、外部事例知識に関して蓄積を行っておらず、利用部門の要求を十分に評価できない。

 一方、システム・インテグレータのシステム提案のやり方も、多くは次のような実態となっている。

  • 正式な引き合いが来てから提案検討を開始している。
  • 引き合いが来たときには、その案件の本当の適任者は多忙であるため、どうしても違う担当者をアサインせざるを得ない。
  • 担当者に、提案書をそのようにした理由を質問すると、顧客から聞いた話なのか、想像なのかよく分からないことが多い。
  • リスクの洗い出しは個別に行うが、結局はどの案件のリスク係数も、30%に落ち着く。
  • 顧客に提出する提案書のレビューでは、レビューアも皆不安であるため、どうしてもあれこれ資料を追加するよう指示が出て、出来上がるとかなり分厚い提案書になる。
  • 部下が作成した提案書をレビューすると、何か足りないように感じてもどかしいが、どう指導すればよいか分からない。
  • 提案のプレゼンでは、顧客の役員や利用部門からの質問が増えてきたが、対応できていない。

価値を生む企画提案が求められている

 利用部門や顧客自身もあまり明確に意識していない「本当の期待」と、いまの企画提案の実態には大きなギャップがあり、受け取る側のもどかしさにつながっている。もどかしさを放置した企画提案のままでは、頼りがいのある相手とは思われなくなる。

 利用部門や顧客は、企画提案に対して次のような要望を持っている。

  • 要望をうのみにするのでなく、さらに良い革新策を提案してほしい。
  • ITがほしいわけではなく、業務革新を支援してほしい。
  • 可能性だけではなく、事例を基に実証された革新方法を知りたい。
  • 革新により、組織や業務がどのように影響を受けるかも知りたい。

 利用部門や顧客の命題とその解き方を構造的にいい当て、その中の何を提供・支援するのかを明確にすることで、利用部門や顧客から見た企画提案の魅力は大幅に増す。そのような企画提案を一定レベルの品質を保持して提供し続けるには、“技術”が必要なのである。


 本連載は、難易度・複雑さが増しているシステム提案の現場で役立つ、組織的な企画提案力の強化方法について考察していくものである。次回からは、プロの企画提案方法論である「コンサルティング・プロモーション」の説明を行っていく。次回はその概要について解説する。

Profile

大上 建(だいじょう たける)

株式会社プライド 常務執行役員 チーフ・システム・コンサルタント

前職で上流工程を担当する中、顧客の利用部門は必ずしも「開発すること」を望んでおらず、それを前提としないスタンスの方が良いコミュニケーションを得られることに気付き、「情報の経営への最適化」を模索することのできる場を求めてプライドに入社。株式会社プライドは、1975年に米国より社名と同名のシステム開発方法論の日本企業への導入を開始して以来、これまで140社余りの企業への導入支援を通じて、情報システム部門の独立自尊の努力を間近に見てきた。


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