企画提案の“知見”を組織で拡充する「プロセスプロフェッショナル企画提案方法論−C/P(3)(1/2 ページ)

コンサルティング・プロモーションは、組織的に企画提案の水準を上げる方法論である。今回はその具体的なプロセスを見ていこう。

» 2006年09月16日 12時00分 公開
[大上 建(株式会社プライド),@IT]

 前回「企画提案のやり方を変革する『方法論』」で、コンサルティング・プロモーション方法論のコンセプトについて解説を行い、特に「提案仮説」について詳細な説明を行った。今回はコンセプトから展開される「コンサルティング・プロモーションのプロセス」の説明を行う。コンサルティング・プロモーションは、次に図示するプロセスを持つ。

図1 コンサルティング・プロモーションの「プロセス」 図1 コンサルティング・プロモーションの「プロセス」(クリック >> 図版拡大)

プロセスの重要性

 前回、方法論とは何かを解説した。その中で、方法論の価値はコンセプトの優劣で決まること、プロセスとはコンセプトおよび方法から展開された仕事の進め方であることを述べた。しかしこれを単純に受け止めて、「コンセプトが分かればプロセスは重要ではない」と理解してはならない。実は組織的に企画提案のレベルを上げるためには、プロセスは非常に重要である。

 仮にいまのあなたが、すでに「顧客の意向を超え、競争相手の水準を超える」レベルでシステムの企画提案ができるのであれば、コンサルティング・プロモーションを学ぶ必要はない。しかし、その水準にない場合は、1人でどれだけ提案仮説を深く考え抜いても、実は大して水準が上がらないことが多い。最終回でも説明を行うが、企画提案をジグソーパズルにたとえるならば、組み立てること(考え抜くこと)ができる力があってもピース(知識や知見)が不足していては、パズルは完成しない(水準が上がらない)のである。

 パズルのピースに当たる知識や知見の獲得・蓄積を1人で行うことは、単に時間がかかるだけでなく、意味解釈して「使える知見」にする効率も悪い。しかし何人かの社内の有能者を集めてディスカッションすれば、相互触発によって、1人で考えているよりも何倍もの知見の蓄積が可能となる。誰しも、1人で考えて完ぺきだと思っていた設計が、レビューをすることで思わぬ気付きが得られた経験があるのと同じである。

 コンサルティング・プロモーションのプロセスには、組織的に企画提案の品質を高め、今回の企画提案だけでなく今後も使えるような「知見拡充」の方法が埋め込まれ、展開されている。そしてこのプロセスを組織で忠実に実施し、あらためてコンセプトを復習することで、本当に「コンセプトが腹に落ちる」のである。

コンサルティング・プロモーションのプロセス

コンサルティング・プロモーションは、次の9つのSTEPから成る。

STEP1 初期提案仮説の構築

 本ステップでは、営業が入手した案件、上司の指示、入手している顧客の計画などから、提案を行う対象顧客についての情報を確認し、社内で実績やナレッジを持っている人間、ツールメーカーやコネクションのある社外有識者から、提案のテーマの関連ナレッジを収集する。そのうえで提案責任者(PM)としての初期提案仮説を構築する。

STEP2 PR-1:初期仮説段階のPR

 PMが個人作業で作成した初期提案仮説に対して最初に実施するプロポーザル・レビュー(PR)会議であり、社内外のこの時点で行って聞くことのできる知見をすべて結集するためのものである。仮説内容を深めることも重要であるが、この段階では検証をまったく行っていないため、より多くの可能性を協働で作り上げることが重要である。PR会議は、知見者が集まって提案仮説を拡充する会議である。

STEP3 提案仮説の拡充

 PR-1において決めた確認ポイントの確認および拡充すべきナレッジの拡充を行う。担当した確認ポイントについて調査スペックを作って調査し、提案仮説とメッセージストリームの拡充を行う。メッセージストリームとは、最終提案の現場をイメージし、顧客の前で何をしゃべるか、そのメッセージを順番に並べたものである。

STEP4 PR-2:仮説検証段階のPR

 PR-2:仮説検証段階のPRの完了基準は、十分に外部事例も蓄積し、顧客に対してディスカッション・プロポーザル(D/P)を実施しても“信頼を損なうことはない”と判断できることである。これが満たされないと判断した場合、本PRの位置付けを「PR-1:初期仮設段階のPR」とし、STEP2に戻る。その宣言はPMあるいは上位者が行う。

 本STEPでは、調査によって得られたファクトを共同で意味解釈し、提案仮説、メッセージストリームの拡充を行う。また、D/Pについて、「誰に会いに行き」「何のメッセージで」「どう変えるのか」を検討する。

 D/Pとは、顧客意思決定者と1〜2時間のディスカッションで、両者にとって最善の落としどころを決め、相手を“落とす”技術である。具体的には、提案仮説の拡充、合意形成、提案の受託を行う。D/Pについては次回解説を行う。

STEP5 D/P計画の作成

 STEP4において、D/Pの現場を想定したレビューを行うことで、D/Pに行ける水準にあるか否かがレビューされている。またD/Pに行くための知恵も結集されている。

 本STEPでは、上記に基づいて、D/P計画とD/P用資料の作成を行う。

STEP6 ディスカッション・プロポーザル(D/P)

 本STEPでは、顧客を訪問しD/Pを実施する。D/P実施後に、D/P実施者は共同でD/Pの結果の相互レビューを行い、互いの意味解釈を交換する。相互レビューによって得られた意味解釈に基づいて、提案仮説の拡充を行う。

STEP7 PR-FINAL:D/P結果のフォロー

 本STEPでは、D/P結果のフォローのためのPR会議を行う。最終のD/P終了時に実施するほか、途中のD/P後であっても必要に応じて、知恵を結集する必要があれば実施する。

 D/Pを反映して、「提案仮説はどのように変わったか」「いま現在の顧客はどのような状況か」を確認し、提案書に向けた提案仮説とメッセージストリームを確定・拡充させる。

STEP8 提案書の完成

 PR-FINALの結果に基づき、提案書を作成する。

STEP9 受注までの課題設定と対応

 本STEPは、PR-1(初期仮説段階のPR)終了以降、継続して実施する。主として提案責任者(PM)、営業および上位者が情報収集を行い、受注までの課題と対応策を明確化し、提案計画を策定して必要な対応を行う。


 この9つのSTEPの中で、「PR-1」「PR-2」「PR-FINAL」という3つの「プロポーザル・レビュー(PR)会議」が登場する。これは、知恵・知見を獲得するための重要な“技術”である。次のページではPR会議について説明する。

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