企画提案の“知見”を組織で拡充する「プロセスプロフェッショナル企画提案方法論−C/P(3)(2/2 ページ)

» 2006年09月16日 12時00分 公開
[大上 建(株式会社プライド),@IT]
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プロポーザル・レビュー会議の基本的位置付け

 PR会議は、従来の主人公不在のまま集団で結論を出すような会議ではない。仮にあなた自身がPM(提案責任者)であるとした場合、PR会議の主人公は、あなた自身である。あなた自身がPR会議を主導し、現時点の提案仮説を参加者に示し、参加者の知恵を徹底的に獲得するのである。

 あなたがPR会議で示す提案仮説は、何も1つである必要はない。むしろ早い段階のPR会議では、可能性のある提案仮説をいくつも提示できる必要がある。あなた(提案責任者)を支援する参加者は、積極的に自分の持っている事例、視点、過去の類似案件のIL(イノベーション・ロジック)やKI(キー・イシュー)、課題と対策といったものを提供しなければならない。それがPR会議に参加する者の義務である。

PR会議は、結論を1つに絞るための会議ではない。あなたが提示するもの、参加者が提供するもの、PR会議の場の触発で生まれるもの、これらは品質については吟味されるべきであるが、どれが良いかを決める必要はない。視点を得た後、熟考して提案仮説を拡充するのは、あなた自身の仕事である。PR会議において仲間から知恵を借りたら、一度気持ちをクールダウンし、冷静に考え、あなたの提案を完成させることが必要である。

 ただしPR会議には、上述のような相互支援の温かい側面とともに、妥協を許さないプロフェッショナルとしての厳しい側面が必要である。それは、ロジックとファクトの追究、顧客の意向と競争相手を超える水準の追求である。

図2 PR会議には、温かい側面と厳しい側面が必要 図2 PR会議には、温かい側面と厳しい側面が必要

 例えばILを提案する場合、リターンが得られるロジックが明快でなければ、それは許されない。また、可能な限り、ロジックはファクトで実証できていなければならない。PR会議参加者は、ロジックがあいまいな提案を厳しく追及すべきである。あいまいなロジックをそのままにしていては、顧客の意向を超えることはできない。どこかでごまかしが暴露する。

「それは論理があいまいだ」「リターンがなぜ増えるか説明し切れていない」といった指摘は、遠慮することなく行う。また、たとえロジックとファクトが明快でも、それが顧客の意向を超え、競争相手の提案内容を超える水準でなければ、それを良しとせず、「レベルが低い」と指摘する。

3段階のプロポーザル・レビュー会議

 PR-1:初期仮設段階のPR 

 PR-1は、PM(提案責任者)が個人作業で作成した初期提案仮説に対して、最初に実施するPR会議であり、社内外のこの時点で行って聞くことのできる知見をすべて結集するためのものである。仮説内容を深めることも重要であるが、この段階では検証をまったく行っていないため、より多くの可能性を協働で作り上げることが重要である。

 PR会議は、知恵を結集する会議である。しかし、これに不慣れなメンバーで実施する場合、習熟のためにブレーンストーミング法などを用いて進行を行う方法もある。

 なおPR会議では、自分のアイデアに固執するメンバーと、そのアイデアは疑わしいというメンバーが、アイデアの妥当性を主張し合い、水掛け論で生産性が悪化することがある。このような場合、以下の対応が必要である。

固執するアイデアの背景にあるファクトを確認し、そのうえで仮説を確定する。

ファクトのないアイデアは、論理的に正しければ過度に妥当性を議論することなく、オプションの1つとして設定し、今後の活動の中で検証することにする。

 PR-2:仮設検証段階のPR 

 PR-2の完了基準は、十分に外部事例も蓄積し、顧客に対してディスカッション・プロポーザルを実施しても、信頼を損なうことはないと判断できることである。進行中に、これが満たされないと判断された場合、本PRの位置付けを即刻PR-1とし、STEP2に戻る。その宣言はPM(提案責任者)あるいは上位者が行う。

 PR-2では、調査によって得られたファクトを共同で意味解釈し、提案仮説、メッセージストリームの拡充を行う。また、ディスカッション・プロポーザル(D/P)について、「誰に会いに行き」「何のメッセージで」「どう変えるのか」を検討する。

 PR-FINAL:D/P結果のフォロー 

 PR-FINALでは、D/P結果のフォローのためのPR会議を行う。最終のD/P終了時に実施するほか、途中のD/P後であっても必要に応じて、知恵を結集する必要があれば実施する。

 D/Pを反映して、「提案仮説はどのように変わったか」「いま現在の顧客はどのような状況か」を確認し、提案書に向けた提案仮説とメッセージストリームを確定・拡充させる。


 プロポーザル・レビュー(PR)会議は、従来の単なる会議とは異なり、知恵を結集するための技術である。PR会議は、知恵の提供、提案内容充実のアドバイスといった優しさと、ロジックの追究、ファクトの追究、顧客の意向を超える水準の追求といった厳しさの両面を併せ持つのである。

 次回は、ディスカッション・プロポーザル(D/P)の解説を行う。

Profile

大上 建(だいじょう たける)

株式会社プライド 常務執行役員 チーフ・システム・コンサルタント

前職で上流工程を担当する中、顧客の利用部門は必ずしも「開発すること」を望んでおらず、それを前提としないスタンスの方が良いコミュニケーションを得られることに気付き、「情報の経営への最適化」を模索することのできる場を求めてプライドに入社。株式会社プライドは、1975年に米国より社名と同名のシステム開発方法論の日本企業への導入を開始して以来、これまで140社余りの企業への導入支援を通じて、情報システム部門の独立自尊の努力を間近に見てきた。


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