コンサルティング・プロモーション推進人材の育成法プロフェッショナル企画提案方法論−C/P(6)(1/2 ページ)

コンサルティング・プロモーションを導入・推進するうえで重要なキーポイントが、それを担う人材である。人材育成はどのように行えばよいのだろうか?

» 2006年10月07日 12時00分 公開
[大上 建(株式会社プライド),@IT]

コンサルティング・プロモーションの推進に必要な人材

 前回「コンサルティング・プロモーション導入のための方法論」の中で考察したビジョンを見ても分かるとおり、コンサルティング・プロモーション(C/P)導入を成功させるためには、「顧客の意向を超える人材」を育成するという、人材育成面の課題が最も大きなものとなる。

 コンサルティング・プロモーション導入の目的・狙いの達成は、コンサルティング・プロモーション方法論を技術的に習得しただけでは困難である。いついかなる時でもコンサルティング・プロモーションのコンセプトを確実に実践する行動規範が必要である。また、コンサルティング・プロモーションというエンジンだけでは質の高い企画提案を作ることができない。燃料に相当する豊富な知識(特に事例の知識)が不可欠だ。

図1 C/P方法論の実践には行動規範と事例知識が必要 図1 C/P方法論の実践には行動規範と事例知識が必要

行動規範

 行動規範とは、思考と行動を大きく変えるための判断基準となるべき原則であって、コンサルティング・プロモーションのコンセプトを確実に実践するためのものである

 具体的にいうと、行動規範は「アクティビティに落とす」などの短い言葉で表現される。これらは抽象論ではなく、極めて実践的・具体的な行動指針となるものでなければならない。

 実践者(育成される人材)は、これを暗記し、常に心にとどめておくことが重要である。そして自分自身の思考と行動が、従来自分が行ってきた方向──成り行きの方向へと流れそうになったとき、自らを律し、行動規範の示す方向へと変える努力が大切だ。

図1 思考と行動を大きく変える行動規範 図1 思考と行動を大きく変える行動規範

 コンサルティング・プロモーションのコンセプトの1つである「ファクトによる実証」を確実に実践するためには、「メッセージファースト」という行動規範が求められる。提案において、成果物は提案書ではない。あなたの提案によって、顧客は実現性を確認し、あなたへの信頼を感じ、自分が行うべきことを認識し、あなたとともにプロジェクトを開始する決断をする。これを行わせるのは、あなたが顧客に語る「メッセージ」である。提案書は、このメッセージを伝えるための支援ツールにすぎない。

 そこで、まず顧客に何を伝えるのか──そのメッセージを明らかにすることが重要である。ファクトは、このメッセージを実証し、メッセージの訴求力を高め、顧客にこれを受け入れてもらうために用いる。つまり、必要なファクトは提案仮説が定まっただけでは特定できない。提案仮説を基に、顧客の誰にどのように思ってもらうか。どのような決断をしてもらうかを考え、次にどのようなメッセージで顧客に決断してもらうか考え、最後にどのようなファクトでこのメッセージを実証すればいいかを考える。メッセージファーストの流れを次に示す。

図3 メッセージファーストの流れ 図3 メッセージファーストの流れ

 ファクトの前に、必ずメッセージが必要なのである。そして顧客に、システム開発に向けた決断を促がすこのメッセージこそが、提案の成果物なのである。

事例の知識

 コンサルティング・プロモーションによって顧客の意向を超える水準を達成するためにもう1つ重要なものが、「事例の知識」である。

 IL(イノベーション・ロジック)や課題に対する解決策などは、実はロジックである。提案において、ロジック部分だけを顧客に示したとする。その場合の反応はどのようなものだろうか。あまりに一般論的に感じられて「安手のビジネス書を読まされているみたいだ」と思われるのがオチである。

 しかしファクトの部分を示し、これで実証したうえでロジックを伝えると、がぜん顧客の聞く態度が違ってくる。興味は「自社はどれだけのリターンが得られるのか」「そのための課題は何か」に向かう。

《ロジック(ILの例)》

商社マンたるもの「営業から代金請求まで……」というパラダイムによって分散していた間接業務を、統合することで販売費・一般管理費を削減、営業時間増大によって拡販する。


《ファクト》

販管費を6年で20%削減(平成**年3月期連結ベ−ス、4700億円を950億円削減し、3750億円とした)。方法は、営業担当者の間接業務の統合による合理化。従来は、商談から物流の手配、経理処理まで、1人で担当することが多いため、営業・物流・経理など、専門部門でそれぞれ業務を推進できる組織と業務制度の整備を行い、全社の生産性を向上させた。


図4 ファクトとロジックの例

 ファクトで実証されたロジックの蓄積は、必要なものをその場になって獲得しようとしても困難である。日ごろから組織的に蓄積する活動が必要だ。それを行う方法がナレッジ拡充会議である。

 ナレッジ拡充会議を行うためには、日常からピンと来たファクトを蓄積しておく。これをナレッジ拡充会議で提示し、そのファクトを全員で意味解釈してロジック展開するのである。意味解釈は多面的にできるため、1つのファクトから多くのロジックが生成できることもある。また触発されてほかのファクトを複合的に考えて意味解釈することで、まったく次元の異なるロジックが生成できることもある。

 事例の知識は、提案に盛り込む革新策(IL)や課題解決方法を創造するための触発材料であり、また、提案内容の顧客に対する訴求力、説得力を高める手段となるのである。

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