企画提案には、プロフェッショナルの技術がある。その技術を体系化・方法論化したものが「コンサルティング・プロモーション」だ。その全体像を解説する。
前回「御社の企画提案がダメな理由」では、一部の強いコンサルティング会社には、プロの提案技術があること、彼らはこれを用いて高い競争力を維持していることを述べた。
われわれは、過去のいくつかのプロジェクトを通じて、このようなコンサルティング会社の提案の方法を精緻に調査し、それらを体系化して方法論にまとめた。本連載では、この方法論──「コンサルティング・プロモーション」の解説を行っていく。
コンサルティング・プロモーションは方法論=統合技術であるため、その解説も体系的に行う必要がある。プレゼンテーションやロジカル・シンキングなどの要素的な技術であれば、いきなり各論から説明してもよいが、方法論を理解するためには、回り道のようでも、方法論の全体像を理解したうえで、その構成要素を順に理解する必要がある。順を追って見ていこう。
「方法論」という言葉自体は非常にポピュラーであるが、その本質的な意味を理解している人はあまり多くない。単なる「方法」を、ことさら「方法論」と発言する人もいるので、ここで定義を明らかにしておく。
- 方法論(メソドロジ)の定義 -
ある目的や狙いを達成するために、それをうまくやるための「コンセプト」「方法(メソッド)」「プロセス」「ツール」の一連のシステム(関連する組み合わせ)である。
方法論の構造を図示すると次のようになる。
方法論とは何かを理解してもらうために、最終製品を生産する製造業を事例として、方法論の構造(上記の「目的・狙い」「コンセプト」「方法」「プロセス」「ツール」)を、説明する。
構造 | 説明 | |
---|---|---|
目的・狙い | 定義 | その方法論が寄与すべき対象。その方法論を用いて達成すべき目的や狙い |
事例 | 資材調達価格の低減 | |
コンセプト | 定義 | 上記の目的・狙いに寄与する根本的な考えのこと。方法論の価値は、このコンセプトの優劣で決まる。 |
事例 | 素材の集中購買: 現状は各部品メーカーが個別に素材を調達し、出来上がった部品を当社が購入しているため、各部品メーカーの価格交渉力で素材が買われている。これを、当社が調達している部品の構成を素材レベルに展開し、部品メーカー各社で共通に使用する素材を、当社で集中購買したうえで各部品メーカーに支給するようにする。素材について、当社の価格交渉力と調達量をまとめることで価格低減を実現する。 |
|
方法 | 定義 | 上記コンセプトを実現するための、主要な技法や手法、技術など。状況やパターンによって、取捨選択されるべき |
事例 | 製造用のBOMではなく調達用のBOM(の整備)、素材レベルの所要量展開、長期計画からの変動の吸収方法(長期契約、スポット調達、スワップ、ヘッジなど)、素材メーカーからの調達方法、素材メーカーから部品メーカーへの直送方法、有償支給の精算方法…… | |
プロセス | 定義 | コンセプトおよび方法から展開された仕事の進め方。業務フローなどで表現される。 |
事例 | 計画プロセス(生産計画や部品所要量から、素材の所要量を算出) 発注プロセス(長期契約とスポット契約による購買と売却を組み合わせて必要量を調達するプロセス)…… |
|
ツール | 定義 | 手順の中で用いられる、物を扱うためのもの(設備や運搬具、冶工具など)。情報を扱うためのもの(帳票、コンピュータシステムなど) |
事例 | 調達BOMの管理システム、素材所要量算出システム…… | |
上記事例では、「調達価格を低減したい」という目的・狙いに対して、「素材の集中購買」というコンセプトの方法論を用いて業務をうまくやろうとしている。この業務は、上記コンセプトから、調達BOMや変動吸収方法などの方法、プロセス、ツールの一連のシステムになっていることが分かるはずである。
方法論とは何かということが理解できたところで、企画提案のプロフェッショナル技術である、コンサルティング・プロモーション方法論を、方法論の構造に従って説明する。
目的・狙い
コンサルティング・プロモーションの「目的・狙い」は、次のものである。
コンセプト
コンサルティング・プロモーションの「コンセプト」は、次の6つである。
方法
コンサルティング・プロモーションの「方法」には、KI(キー・イシュー)の分解と発想方法や達成課題の分類フレームワーク、顧客・競争相手に対する優位性獲得方法などがある。
プロセス
コンサルティング・プロモーションの「プロセス」は、下図のように9つのステップからなる。
ツール
コンサルティング・プロモーションの「ツール」には、確認ポイント整理のためのフォーマットや提案仮説を既述するフォーマット、ならびにそれらの記入事例などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.