概要に続いて、その中身について触れていこう。前のページで触れたとおり、コンサルティング・プロモーションには、6つのコンセプトがある。
コンサルティング・プロモーションは、仮説ベースの考え方を採っている。初回の顧客訪問の前から1つだけではなくいくつか仮説を準備し、検証と仮説拡充を繰り返すのである。
この徹底的な仮説準備を行うためのフレームワークが「提案仮説」である。後述する15項目のシンプルな問いにスパッと答えられるところまで骨格を詰めることで、初めて顧客をリードすることが可能になる。
イノベーション・ロジックとは、例えば「在庫コントロール機能の集約によって各国の在庫の偏在を改善し、在庫と欠品を削減する」というようなロジックである。
提供するソリューションやプロダクト、開発の作業や方法を商品とするのではなく、顧客のビジネスにリターンをもたらすロジックを商品とすることで、企画提案の価値を高めるのである。ILは提案仮説の重要な要素である。
キー・イシューとは、例えば「在庫コントロール機能を集約するうえで、どのように世界各国にある関係部門から製品コード統一の合意を得るのか」というように、顧客が本来悩むべき課題である。
顧客自身がそれに気付いていない場合があり、これを言い当て解決支援をコミットすることで、企画提案の付加価値が高まる。
どんな立派なILも、それを言葉で表現しただけでは“絵に描いたもち”である。顧客が求めているのは“食べられるもち”だ。ファクトによってロジックの実現性を裏付けなければ、顧客に訴求しないだろう。
また、ファクトによる実証を欠いたまま実行フェイズに突入すれば、思わぬ落とし穴にはまることになる。
コンサルティング・プロモーションの狙いは、顧客の意向を超え、競争相手を超える水準の企画提案を生み出すことである。そのためには、社内外の知恵を結集することが重要となる。
コンサルティング・プロモーションでは、「PR(プロポーザル・レビュー)会議」という知恵の結集の場を用意している。
コンサルティング・プロモーションでは、作られる企画提案の品質が目標水準(顧客の意向を超え、競争相手の提案を超える水準)を維持することを保証する方法として、プロセス上に5つのステージゲートを設けている。これによって、提案責任者とPR会議責任者が、どのタイミングで、どのようなステージをクリアすべきかが明確になっている。
コンセプト:提案仮説
上記の6つのコンセプトのうちの1つである、「提案仮説」についてもう少し詳細に解説を行うことにする。
コンサルティング・プロモーションで用いる提案仮説は、次に図示するような構造を持つ。三角形部分が提案仮説の骨格であり、この骨格を確かなものにする項目と併せた15項目からなるフレームワークが「提案仮説」である。
コンサルティング・プロモーションでは、例えば上司のレビューなどで(A)を明確に答えられるように、以下の(1)〜(15)の項目を詰めていく。
いつ、いくらで、誰から、何を受注するか?
KI(=顧客の悩み)と、これを打開するための提案内容は何か?
KIは、どのような顧客内外のファクトに基づくか?
KIは、どのような顧客の意思に基づくか?
IL(KIを解決し、リターンを上げるロジック)は何か?
ILの効果を実証するファクトは何か?
システムビジョン(IL実現のためにシステムと業務をどのように革新するか?)
ビジョン達成課題(顧客はどのような課題指摘「反論」をするか?)
課題解決策(顧客の課題指摘「反論」にどのように切り返すか?)
課題と対策の妥当性を実証するファクトは何か?
プロジェクト戦略(検討したテーマを突破口に、さらなる提案受注のために何を行うか?)
遂行方法(標準遂行方法の中で、上記課題をどのように解決するか?)
受注課題と対策(優位なポジションをどのように獲得するか?)
顧客は現在どのような認識を持っているか?
CC(チェンジコンセプト=顧客の認識をどのように変革するか?)
提案計画(以上を踏まえ、今後どのように提案を進めるか?)
コンサルティング・プロモーションでは、このフレームワークの各項を埋めた「答え」だけを議論する。コンサルティング・プロモーションのプロセスの中で、上位者は提案責任者に対して、最初からこの「答え」だけを聞き続ける。PR会議において、提案責任者はこのフレームワークで提案仮説を説明し、参加者はこのフレームワークで知恵を出す。
その意味で「提案仮説」は、知恵を結集するためのフレームワークであり、品質を保証するためのフレームワークでもある。
次回は、コンサルティング・プロモーションの「プロセス」「PR会議」の解説を行う。
大上 建(だいじょう たける)
株式会社プライド 常務執行役員 チーフ・システム・コンサルタント
前職で上流工程を担当する中、顧客の利用部門は必ずしも「開発すること」を望んでおらず、それを前提としないスタンスの方が良いコミュニケーションを得られることに気付き、「情報の経営への最適化」を模索することのできる場を求めてプライドに入社。株式会社プライドは、1975年に米国より社名と同名のシステム開発方法論の日本企業への導入を開始して以来、これまで140社余りの企業への導入支援を通じて、情報システム部門の独立自尊の努力を間近に見てきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.