AnthropicはAIアプリケーションを外部システムへ接続するための共通仕様「MCP」をLinux Foundation傘下の新組織AAIFへ寄付した。同社の狙いとは。
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Anthropicは2025年12月10日(現地時間)、AIアプリケーションを外部システムへ接続するための共通仕様「Model Context Protocol」(MCP)をLinux Foundation傘下の新組織「Agentic AI Foundation」(AAIF)へ寄付すると発表した。AAIFはAnthropicやOpenAI、Block(旧Square)が共同で設立し、GoogleやMicrosoft、Amazon Web Services(AWS)、Cloudflare、Bloombergが支援する基金だ。MCPを同組織の中核プロジェクトとして移管し、広範な関係者が参画する形で標準仕様を維持、拡張すると説明している。
MCPはAIアプリケーションを外部システムへ接続するための共通仕様として2024年に発表された。公開後の採用は急速に進み、現在は1万以上の公開MCPサーバが稼働しているとされる。個人開発者から大企業まで利用が広がっている。採用製品には「ChatGPT」「Cursor」「Gemini」「Microsoft Copilot」「Visual Studio Code」(VS Code)などが名を連ね、主要プラットフォーム間で標準的に使われる仕組みになりつつある。
クラウド基盤においてもMCP対応が整備されており、「AWS」や「Cloudflare」「Google Cloud」「Microsoft Azure」が提供する環境で企業用のデプロイ支援が行われている。Anthropicはこの流れを踏まえMCP関連の機能整備を続けており、「Claude」は75以上のコネクターを備えている。APIは大規模運用向けの「Tool Search」や「Programmatic Tool Calling」の機能が追加された。
MCPには利用者が公開サーバを容易に検索できる仕組みがある。2025年11月25日には、非同期処理やステートレス設計、サーバ識別、公式拡張機能などが追加された。SDKも主要言語向けに整備され、PythonとTypeScriptでは月間9700万を超えるダウンロードが確認されている。
Anthropicは当初からMCPをオープンソースで維持する方針を掲げてきた。今回の寄付は中立性を保つための取り組みの延長に位置付けられる。Linux Foundationは長年にわたりLinux KernelやKubernetes、Node.js、PyTorchなど重要なOSSプロジェクトの運営を担ってきた組織であり、中立的な管理体制と協調型の開発体制で知られる。AAIFはこの枠組みの中で、エージェンティックAI領域の標準化と共同開発を後押しする基金として機能する。
MCPはAAIFの発足プロジェクトとして、Blockによる「goose」、OpenAIによる「AGENTS.md」と並んで位置付けられる。これらを同一の基金下に統合することで、エージェンティックAI分野における基盤技術の発展を促し、仕様の中立性と公開性を確保する狙いだ。MCPのガバナンスはこれまで通り維持され、メンテナーがコミュニティーの意見を重視する運営方針を保つと明言されている。
Anthropicは、エージェンティックAIの健全な発展にはオープンソースの基盤技術が不可欠との認識を示し、今回の寄付を通じてMCPを長期的に開かれた標準として維持する姿勢を表明した。今後もAAIFを通じてMCPおよび関連プロジェクトへの貢献を続けると述べ、エコシステム全体の発展に寄与する意向を示している。
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