「2030年に生産性を語る人はいなくなる」 AI統合の先にあるシステム開発の新基準とはCIO Dive

AI統合が加速した2025年を経て、2026年は生産性のコモディティ化が進み、評価指標は創造性やイノベーションへと変わる。ITエンジニアにはAIが生成したコードの検証力や、分析力、好奇心といったスキルが求められる一方、高まるプレッシャーによる燃え尽きへの対策も急務だ。

» 2026年02月09日 07時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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筆者紹介:リンジー・ウィルキンソン(Lindsey Wilkinson)(「CIO Dive」記者)

米国ジョージア州出身、アラバマ州立大学卒。アラバマ州立大学が発行する雑誌『Alice Magazine』編集長や、『The Crimson White』『Homeland Security Today』などへの寄稿などを経て、2022年5月より現職。AIがビジネスに与える影響を中心に取材している。

 企業およびCIO(最高情報責任者)、開発チームは、新たな機会と課題に毎年直面している。経済における不確実性に多くの組織が影響を受ける中、ITエンジニアにとって、2025年はAIの統合や効率性の確保にこれまで以上の注目が集まった1年となった。

 Gartnerのアルン・バッチュ氏(バイスプレジデント・アナリスト)は、2025年の秋に開催された同社のイベント「Symposium/Xpo」のセッションで「私たちは興味深い分岐点に立っている」と述べた。企業には2つの重要な優先課題があるのだ。それはAIによるイノベーションの推進とソフトウェアエンジニアリングの実践や規律の強化だ。

2026年はAIによる「燃え尽き症候群」が顕在化か

 バッチュ氏によると、企業がAIネイティブなソフトウェアエンジニアリングを追求する一方で、2025年に開発チームは意識の転換が十分に進まないことや、重要かつ基礎的なスキルの不足、大規模言語モデル(LLM)の非決定的な性質などの課題に直面したという。

 その他の課題としては、LLMを基盤としたアプリケーションやエージェントを構築することに伴うコスト管理やインフラの複雑化が挙げられる(注1)。さらに、スキルギャップがこれらの課題を一層深刻なものにしている。

 バッチュ氏は「スキル高度化への投資が重要だ」と述べている。一方、AIツールへの過度な依存はスキルの成長を阻害する恐れがある(注2)。組織はこの点に注意を払わなければならない。

 また、燃え尽き症候群もエンジニアチームを悩ませる深刻な課題となり、2026年にかけて顕在化が見込まれる。

 AI導入の拡大に伴い、企業がITエンジニアに求める期待の水準も高まっている。プログラミングスキルの学習用プラットフォームを運営するHackerRankのレポートによると(注3)、開発者の3分の2以上が「プロジェクトをより迅速に完了させるよう求めるプレッシャーが強まった」と回答した。

 「これらの要求に力を入れて取り組むあまり、競争の激しい環境では燃え尽きてしまう。経営陣はその事実を認識しなければならない」(バッチュ氏)

2026年以降はAIを活用したシステム開発が前提

 開発のライフサイクルにAIを統合する取り組みは、ITエンジニアの業務フローを既に変えつつあるが、今後はさらなる変革が控えている。

 Gartnerのデイブ・ミコ氏(シニアディレクター・アナリスト)は、Symposium/Xpoのセッションで次のように述べた。

 「まず、働き方が変化する。その後にエンジニアが構築し、提供するものに変化が起こる」

 2025年におけるエンジニアチームの優先事項は、業務フローにAIを統合することだった。しかし2026年以降、AIを活用したシステム開発が前提となる中で、CIOは競争優位性を維持しなければならない。

 Gartnerは、「人員削減が進むと予測するのではなく、AIを活用したサイクルによって企業がより多くのITエンジニアを必要とするようになる」と見ている。

 「差別化されたソフトウェアへの需要、それに伴う開発者への需要は今後さらに高まっていくだろう。これらを大規模に実現できるのはITエンジニアだけだ」(ミコ氏)

 ミコ氏は「CIOは人材プールへの投資やチームメンバーのスキル向上に取り組むことで、今から準備を開始できる」と示唆した。また、ITリーダーは成功の指標として何を特定し、追跡するのかについても見直す必要があるだろう。

 「AIによってITエンジニアの生産性がコモディティ化していく。その中で有効性を判断する要素となるのは、ベロシティーやデプロイ頻度、コード行数といった従来のプロダクトベースの指標ではなく、創造性やイノベーションだ」(ミコ氏)

2026年におけるスキルプロファイル

 テクノロジーが事業の中核に近づくにつれて、ソフトスキルの重要性は着実に高まっている。生成AIのような新しい技術によって、多くの人が専門的な技術を使えるようになったことも、この流れを後押ししている。

 Skillsoftのオーラ・デイリー氏(CIO)は、「CIO Dive」に対して次のように語った。

 「私たちはそれらをパワースキルと呼んでいる。例えば、分析が得意な人や好奇心が強い人たちが持つスキルだ。これらのスキルは、AIの文脈に価値を付加する上で非常に有効であり、その中には技術的な領域で従来以上に大きな影響を及ぼすものもある」

 デイリー氏によると、ITエンジニアの中核となるコーディングのスキルは、AIが生成したコードを分析および検証し、セキュリティを確保する能力へと進化していく可能性が高いという。

 全ての従業員がある程度のコーディング能力を持つようになった場合、真の競争優位は、どの組織が最も優れたソフトウェアを作れるかという点に移ることになる。ただし、優れているかどうかの定義は組織ごとに異なり、高度なカスタマイズができるか、最も脆弱(ぜいじゃく)性が少ないのか、最も早く市場に投入できるのかといった点で決まる。

 「生産性の向上そのものを気にする人は2030年までにいなくなるだろう」(ミコ氏)

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