P2P技術を使った ストリーミング放送
AMラジオでおなじみのニッポン放送がNTT東日本と共同でインターネットラジオのストリーミング実験を行っている。ただ、非常に興味深いのは、これが従来の単なるストリーミング放送ではなくP2P*1型の放送という点だ。
P2Pとは、音楽ファイル交換ソフトの「ナプスター*2」や「グヌーテラ*3」で一躍有名になった通信方式で、サーバーを介さずにネットに接続された利用者のパソコンどうしが通信を行い、ファイルや情報の交換を行うという技術。今回の実験は、ストリーミング放送にその技術を取り入れてしまおうというものだ。
視聴者がバケツリレーで 放送を中継する
P2P型ストリーミングの仕組みを端的にいうと、放送を視聴している各パソコンが、“バケツリレーで順送りにストリームを流す”というもの。通常のストリーミング放送であれば、視聴者全員が配信サーバーに接続してストリームを受信することになるが、この場合、サーバーに接続するのは一部のパソコンだけで、多くの視聴者はその下流にぶら下がるように接続してストリームを中継してもらう仕組みとなっている。
「親」→「子」→「孫」……、というふうに視聴者のパソコンが接続されて、配信ストリームを下流のパソコンに中継している点が、P2P型ストリーミングの大きな特徴といえる。理屈からいえば、P2Pで何階層でも接続することができるので、何万、何百万というパソコンがストリームを受信する巨大インターネット放送網を構築することができるのだ。
配信コストを 10分の1に削減可能
では、なぜこのような仕組みが考え出されたのだろうか? ポイントは、「配信コスト」にある。従来型のストリーミング放送*4の場合、視聴者全員が配信元のサーバーに接続するため、サーバーや回線といった配信システムの部分で視聴者の数に見合ったものを用意する必要があった。たとえば、有名アーティストのライブともなると、何万人もの同時アクセスが発生し、全視聴者に満足な配信を行うには、設備などにそれ相応のコストをかけなければならない。
だが、P2P型ストリーミングだと、視聴者全員がサーバーに接続する必要はないため、配信側の設備コストを抑えることができるのだ。今回の実験に関しても、正確な数字は未確認としながらも「従来型で行うよりも10分の1程度のコストに抑えることを目標にした」(NTT東日本ブロードバンドビジネス部担当部長・園田雅文氏)と明かす。
実際、今回の実験では、配信サーバーなどはパソコンベースのシステムで構築されており、「非常に安価に済んだ」(同氏)という。コンテンツを提供する側からすれば、安価にストリーミング放送を行うことができるので、これまでコストの点で配信することができなかったコンテンツでも、出しやすい環境が整うことになる。現在はまだ実験段階であり、実際のサービスに関しては「全くの白紙だが、2〜3の事業者が興味を示している」(同氏)と、インターネット放送としての可能性も十分なようだ。
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